開放骨折などの外傷や、骨腫瘍・骨髄炎に対する治療としての切除により、大腿骨などの長管骨の骨欠損がしばしば発生する。小骨欠損に対する治療としては、骨誘導能などの活性を保ったまま移植可能で免疫反応も生じない自家骨移植がgold standardとして確立されているが、自家骨移植には患者自身の腸骨などの健常組織から海面骨を採取する必要があり、採取部の変形や疼痛、感染、神経血管障害などの合併症のリスクがある上、採取量と治療可能距離に限界がある。自家骨移植だけでは治療困難な骨欠損は巨大骨欠損と定義されており、巨大骨欠損に対する治療は未だ確立されていない。研究協力者である宝田剛志教授は、ヒト多能性幹細胞 (iPS細胞) より、高い軟骨分化指向性を有し、拡大培養可能で、前向き品質管理が可能なヒト軟骨前駆細胞を大量に調整する技術を開発することに成功している。本研究ではSCIDラットで作成した骨欠損モデルにヒトiPS細胞由来の軟骨前駆細胞や硝子軟骨様組織体を充填し内軟骨性骨化を誘導することによって骨形成を促進し、巨大骨欠損を治療する新規骨再生治療の開発を目指している。本研究で小骨欠損または巨大骨欠損部にiPS細胞由来の軟骨前駆細胞や硝子軟骨様組織体を充填し、経時的な画像評価と採取した骨の組織学的評価を行ったところ、骨形成が進行しており内軟骨性骨化と自家骨への置換が生じていた。従って、この方法は巨大骨欠損を治療する新規骨再生治療に繋がる可能性があると考える。
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