研究課題/領域番号 |
21K20993
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
松本 大輔 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (30906540)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 器官培養 / 精子形成過程 / 甲状腺機能 / 精子幹細胞 |
研究実績の概要 |
男性不妊症の原因の9割は特発性の精子形成障害だが、その全容は未だ解明されていない。精子幹細胞は幼若期に分化し、その細胞数が規定され、精子の供給源として重要である。私たちは、これまで停留精巣における精子幹細胞の分化異常について研究を進めてきた。その過程で、甲状腺機能低下症を合併した症例では精子幹細胞数が有意に増加することを見出した。そこで本研究の目的は、精子幹細胞の分化過程における甲状腺機能の役割の解明とした。本研究では、精巣組織を体外で培養する器官培養系を確立し、甲状腺ホルモンによる精巣構成細胞の形質変化をフローサイトメトリーやマイクロアレイなどを用いて解析する。本研究の成果は、精子幹細胞の分化・増殖過程の解明につながる。さらに、甲状腺機能の評価による男性不妊症のリスク予測や、新規治療薬開発が期待できると考えた。 上記の研究目的と研究実施計画に沿って研究を開始し、現段階では幼若期ラット精巣の器官培養を試みている。培養液の組成や濃度、温度やCO2濃度、また精巣の処理の仕方や切片の大きさなどを調整し、最適な培養環境を模索している。培養環境により精巣組織に異なる変化がみられており、それぞれの正確にはどのような変化が起きているのかを調べ、またその変化を数値化することをおこなっている。また、培養した精巣組織の分化・増殖の状態を評価するための最適な免疫染色マーカーを探索しており、精細胞系に関しては抗UTF-1抗体などの数種類の分子が候補となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、初年度に精巣の器官培養系を確立し、次年度では甲状腺ホルモンやその他の試薬による精子形成過程への影響を調べる計画であった。 現在は、器官培養系の確立を目指す段階にあるため、当初の計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度は本研究の開始段階であったため、計画した実験研究に関して多くの条件を変化させながら並列で研究計画をたてることは難しかったが、今年度は条件の設定を多数同時並行で行い、より短い時間で多くの条件設定ができるように計画を見直して推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は、精子幹細胞の分化過程における甲状腺機能の役割の解明である計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定していた研究を進めることができなかった。また国際・国内学会出張も計画していたが、出張することもできなかった。このため次年度使用が生じた。(1)精巣の器官培養系の確立 (2)器官培養系へのTSH・T3・T4刺激による細胞分化・増殖に関する検討を加速させる。
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