研究課題
子宮内膜症は子宮内膜様組織が異所性に増殖する疾患であり、その病態においてサイトカインは重要な役割を果たす。Interleukin(IL)-6、8、TNFαは子宮内膜症の増悪因子であるが、これらの作用を抑制しても病巣の進展抑制は困難であることが知られている。サイトカインを標的とした治療戦略を考える上で、病巣への作用だけでなく、免疫応答を含めた子宮内膜症の病態を包括する役割を持つサイトカインの選択が必要である。IL-9は気管支喘息や関節リウマチなどの慢性炎症性疾患において病巣での炎症性サイトカインの分泌を亢進させるだけでなく、マクロファージやTh17細胞などの免疫細胞に対しても作用を及ぼすことが明らかとなっている。これまでに気管支喘息で報告されているIL-9の炎症・免疫反応に対する作用は子宮内膜症で報告されてきた病態と合致している。しかし、子宮内膜症におけるIL-9の炎症、免疫応答に対する作用は検討されていなかった。本年度では、子宮内膜症間質細胞においてIL-9はIL-8、COX-2の発現を亢進させることを明らかとした。さらにその機序を検討したところ、IL-9は細胞内シグナル伝達経路であるp38-MAPK、ERK1/2経路を亢進させることを見出した。さらにIL-9受容体の発現は子宮内膜症病巣において、正所性子宮内膜と比較し亢進してることを明らかにした。上記結果は、子宮内膜症間質細胞においてIL-9はIL-9受容体からの細胞内シグナルを介して病巣の進展に重要な働きを持つことを示唆している。
2: おおむね順調に進展している
研究成果の一部は学会発表や論文投稿を行なっており、当初の計画通り進んでいる。
サイトカインを中心に子宮内膜症患者と非子宮内膜症患者の腹腔内の免疫環境の差異を解明する。IL-9受容体を標的とした治療効果を検討する。
実験計画から特定の抗体、実験マウスなどの購入を次年度に購入し実験予定とした。また、国際学会がWebでの発表となったため。次年度使用額が上記物品の購入にあてる。また、現地開催での国内、国際学会でも発表を行っていく。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
American Journal of Reproductive Immunology
巻: 86 ページ: -
10.1111/aji.13380