本研究では子宮内膜症におけるサイトカインに着目し、子宮内膜症におけるIL-9の役割について検討してきた。昨年度は、子宮内膜症間質細胞においてIL-9はIL-8、COX-2の発現を亢進させることを明らかとし、さらにその機序を検討したところ、IL-9は細胞内シグナル伝達経路であるp38-MAPK、ERK1/2経路を亢進させることを見出した。さらにIL-9受容体の発現は子宮内膜症病巣において、正所性子宮内膜と比較し亢進してることを明らかにした。さらに本年度では、子宮内膜症患者におけるIL-9濃度、IL-9産生ヘルパーT細胞割合の変化を明らかとするため、腹腔鏡手術を受けた生殖年齢女性を対象に子宮内膜症患者と非子宮内膜症患者の腹水、血液中のIL-9、IL-9産生ヘルパーT細胞の割合を検討した。腹水、血液中のIL-9濃度は子宮内膜症と非子宮内膜症患者で変化は認めなかったが、一方、IL-9産生ヘルパーT細胞の割合が子宮内膜症患者の腹水において、非子宮内膜症患者よりも増加していることを明らかとした。IL-9の役割については、in vitroでの子宮内膜症患者において、IL-9により上昇したIL-6、COX2は抗IL-9抗体により抑制されることを確認した。また、TNFαは子宮内膜症の増悪因子として知られているが、子宮内膜症間質細胞においてTNFα存在下ではIL-9によるIL-6上昇が相乗的に増加することを見出した。 本研究において、IL-9はIL-6、COX2を介した子宮内膜症の炎症、免疫に関与すること、IL-9は子宮内膜症の治療標的となり得ることを明らかとした。
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