我々は、生命活動を営む上で酸素を利用する。体内に取り込まれた酸素の一部は、通常の状態よりも反応性の高い活性酸素(Reactive Oxygen Species:ROS)となることがある。この活性酸素は、DNA損傷、蛋白質の変性、各種酵素の機能失活などをもたらすが、それらの障害の多くは各種の修復機構により修復される。活性酸化による酸化そのものも、抗酸化機構によって抑制されている。しかし、抗酸化機構や修復機構の能力を超えた過剰な量の活性酸素が発生した場合、それらの過剰な活性酸素によって老化、がん、糖尿病、高血圧などの多くの疾病が誘発されると考えられている。一方で、活性酸素は負の要素だけではなく、その強い酸化力により、細菌などへの免疫反応にも利用されるとの報告がある。さらに、活性酸素は細胞間のシグナル伝達、細胞の分化などの生理活性物質として機能するとの報告もあるなど、活性酸素の全貌は掴めていない。本研究は、歯の発生における活性酸素について検索することを目的とする。Verginal plugでの交配の有無での判定でばらついていた発生ステージは、胎仔の重さによる判定で安定した。NBTによる染色で判定では、重さ測定の際に器具が胎仔に触れることで、活性酸素が偽陽性になることが判明していたため、他の活性酸素マーカーであるdihydroethidiumの検出を試みたが、安定した結果は得られなかった。そこでNBTによる染色の染色法の種々の改善を試みた。顔面の半分のみを除去してNBT染色することで、残った半分の顔面の口腔内への溶液の到達性を良くする一方で、口腔内部への器具の接触を防ぎ、偽陽性が防止できることが確認できた。
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