研究課題
骨に発症する癌の進行は骨髄微小環境(ニッチ)と密接に関連する。骨髄腫は骨を構成する細胞の大部分を占め、骨髄ニッチの制御に中心的な役割を担うことが近年明らかになり、骨破壊病変を形成するがんの一つである多発性骨髄腫でも、骨細胞が腫瘍進行、血管新生、骨破壊を助長するニッチの形成に寄与することが示唆されている。ところが、これまでの報告では多発性骨髄腫におけるニッチの機能解析は遺伝子改変マウスを用いた証明がほぼなされていない。これは正常免疫を有した適切な多発性骨髄腫の同種移植モデルが確立されていないことが原因であり、世界的に多発性骨髄腫病態の全容解明に大きな障害となっている。本研究では、骨細胞が骨髄腫細胞の遠隔転移や進展に関与するかを、骨細胞を生体内で特異的にアポトーシスを誘導することができる独自のマウス骨髄腫細胞株同種移植モデルで検証し、将来的に骨細胞のアポトーシスを防ぐことで骨への骨髄腫やその他のがんの骨転移・進展を阻止し、予防する新規治療法を確立することを目的とした。これまでの研究で骨細胞にジフテリア毒素受容体(DTR)を発現させたDmp1-HBEGFマウスにジフテリア毒素(DT)を投与したところ骨細胞を特異的に死滅させることができた。また、C57BL/6マウス由来の同種移植が可能な骨髄腫細胞株にLuciferaseを遺伝子導入することに成功し、In vivo Imaging System (IVIS)にて骨髄腫の進展状況がリアルタイムで確認することが可能となった。本年度は、Dmp1-HBEGFマウスに確立した骨髄腫細胞株を移植し、その経時的変化を観察したところ、骨細胞の死滅除去によって骨髄腫の腫瘍進展が促進される傾向が見られた。
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Antioxidants
巻: 12 ページ: -
10.3390/antiox12010133