軟骨疾患の一つである変形性関節症(OA)では、酸化ストレスにより関節軟骨の細胞外基質の減少と軟骨細胞の細胞死が引き起こされ、関節軟骨の表層から変性が進行する。しかしその機序は明らかになっていない。一方、関節軟骨は典型的な無血管組織で、その表層と深分の酸素分圧は6%と1%と、深部に行くに従って酸素分圧が低下する。マウス軟骨様細胞ATDC5細胞をIL-1βに暴露すると活性酸素産生酵素NOX-2の発現が誘導されること、NOX-2の発現誘導にモノカルボン酸トランスポーター (MCT)-1が必要であることが知られている。変形性関節症では関節軟骨の変性は表層部から始まり深層に進行する。そこで、軟骨細胞死に対する酸素分圧の関与をin vitroで解析し、その結果、関節軟骨表層と同じ6% 酸素下では細胞死が起こったが、深層と同様の2%以下では、MCT-1およびNOX-2の発現、細胞死がともに抑制されていた。軟骨細胞におけるMCT-1の発現制御に関する報告は皆無だが、この研究で応募者は、IL-1βの刺激を受けた軟骨細胞で、酸素分圧に依存して転写因子NF-κBの活性化が起こりMCT-1の発現を上昇させることを見出した。さらに実験を進めて解析を行いin vivoでの酸素分圧の研究の足掛かりとなるデータ解析を継続して行った。本研究の遂行により顎関節を含む変形性関節症の治療に有望なアプローチが見出される可能性があることから、本研究の継続は臨床的に重要な意義を持ち、大きな社会貢献となると考えられる。
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