研究課題/領域番号 |
21K21024
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
梶原 美絵 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (70906354)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 光遺伝学的手法 / PV細胞 / 島皮質 / channelrhodopin-2(ChR2) / 光刺激 / 行動生理学 / 疼痛 |
研究実績の概要 |
抑制性ニューロンの中で約半数を占めるParvalbumin細胞(PV細胞)は興奮性ニューロンを強力に抑制する。本実験では,parvalbumin-Cre遺伝子改変ラットの島皮質にchannel rhodopsin-2(ChR2)ならびに赤色蛍光タンパクを発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV5-EF1α-Flex-hChR2(H134R)-mCherry;AAV)を注入して,PV細胞に特異的にChR2を発現させた(PV-ChR2ラット)。PV-ChR2ラット島皮質の青色光刺激によりPV細胞を活性化させ,侵害刺激に対する逃避行動の変化を計測した。 島皮質に光照射ファイバーを植立したPV-ChR2ラットを頭部固定装置を用いてアクリル円盤の上で固定した。本実験では,ラットが逃避行動を示すとアクリル円盤が回転し,回転量から逃避行動を定量化することが出来る装置を使用した。頬の表面に侵害性レーザーを500ms,1000ms,1500msの時間で照射し,逃避行動を示す照射時間を検索したところ,照射時間に比例して逃避行動量も増加した。また500ms,1000msに比べて1500msの照射時間では逃避行動量が優位に増加した。そこで侵害刺激としてレーザー照射時間を1500msと設定し,①無刺激時,②青色光刺激時,③侵害レーザー刺激時,④侵害レーザー刺激と同時に青色光刺激時での逃避行動の変化について調べることとした。現在①~④の条件下でのデータ取得の最中であり,③より④の条件下でラットの逃避行動量が少ない傾向にある。今後は3方向から逃避行動の動画撮影を併せて行い,Matlabで作成した自作ソフトを用いて記録した円盤回転量およびラットの侵害刺激を避ける前肢の動きや瞬目を解析し①~④の各々の逃避行動量を比較することで,島皮質光刺激による疼痛抑制効果を検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラット島皮質へのアデノ随伴ウイルス(AAV5-EF1α-Flex-hChR2(H134R)-mCherry;AAV)の注入およびラットへの頭部固定装置の取り付けおよび光照射ファイバーの植立は予備実験で手技がある程度確立していたため,本実験においても早期に手技を確立することができた。そのため当該年度で予定していた「光刺激誘発性PV細胞活性化による侵害刺激に対する疼痛行動の軽減効果の検証」に必要なデータ取得は順調に進んでおり,概ね研究スケジュール通りである。次年度も引き続き光刺激による疼痛抑制効果の検証を行っていく。
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今後の研究の推進方策 |
現在の「光刺激誘発性PV細胞活性化による侵害刺激に対する疼痛行動の軽減効果の検証」について,ラットの逃避行動が侵害レーザーによる侵害刺激に対するものであることを示すため,正常動物に赤色蛍光タンパクを発現させるアデノ随伴ウイルス(AAV5-EF1α-mCherry)を注入し,引き続き検証を行っていく。 また,疼痛抑制効果を検証するためにラットの侵害刺激からの逃避行動をアクリル円盤の回転量から解析を行っていたが,ラットの自発的な動きも円盤回転量に含まれるため,侵害刺激を避ける前肢の動きや瞬目を撮影し,解析を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に実験施設の移設が行われ,移設期間中の動物実験が実施できず予定より残金が生じた。実験は概ね順調に進んでおり,実験施設の移設も終了したため,次年度も引き続きPVChR2ラットを用いた光遺伝学的手法を用いた疼痛抑制効果の行動生理学的検証を行う。次年度への繰越金は令和4年度の助成金と併せて,消耗品費として使用予定である。
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