骨量の調節において重要な因子であるWntの受容体であるRykは、申請者の研究室によって骨形成に関与する因子であることが明らかにされた。しかしながら、数あるWntリガンドの中で、どのWntリガンドがRykを介して骨形成作用をもたらすか全く未解明のままであった。申請者は、骨芽細胞特異的Ryk欠損(Ob-Ryk cKO)マウス及び野生型(WT)マウスから骨を採取し、Ob-Ryk cKOマウスでは負の調節を受けずにRyk結合性Wntリガンド発現が増加していると仮定してRNA-seqを行った。その結果、Ob-Ryk cKOマウス骨おいてWnt4及びWnt10b発現が増加していることが明らかになった。そこで、Wnt4及びWnt10bが、Rykの作用である骨形成を促進する機能を有しているか検討するために、骨芽細胞への分化能を有するST2細胞にWnt4及びWnt10bの過剰発現を行った。その結果、Wnt4及びWnt10bともに骨芽細胞分化を促進し、Ryk機能と一致する結果となった。また、Ob-Ryk cKOマウス骨髄において脂肪細胞が多いことが示唆されており、Wnt4及びWnt10bの脂肪細胞分化への影響も検討した。ST2細胞を脂肪細胞分化培地で培養する際に、Wnt4及びWnt10bの過剰発現した結果、Wnt4及びWnt10bともに脂肪細胞分化を抑制することを見出だした。加えて、骨髄間質細胞(BMSC)への影響を調べるために、LepRを免疫染色により検出した結果、Ob-Ryk cKOマウス骨髄に存在するBMSCが少ないことが明らかになり、Ki67陽性の増殖細胞が減少していることが明らかになった。これらの結果は骨組織において、Wnt4及びWnt10bはRykを介してBMSC数の調整、及びBMSCの骨芽細胞・脂肪細胞分化のコミットメントに関与している可能性を示している。
|