研究実績の概要 |
【目的】マグネシウムは人体の生命活動を支える生体必須元素で生体内には約25 gが存在し、その50-60%がリン酸塩として骨組織に存在するとされる。マグネシウムは骨の主成分であるカルシウムと同様に周期表の第2族に属する元素で化学的性質も類似している。そのため骨代謝においても類似的あるいは相補的な作用を有する可能性が考えられているが、具体的な作用についてはいまだ不明な点が多い。われわれは予備実験においてウサギ頭蓋内にマグネシウム製ネイルを埋入し、マグネシウムの分解過程を経時的に観察したところ、マグネシウム表面にカルシウムリン酸塩の腐食層が形成される過程を観察した。これらの結果からマグネシウムは初期の骨形成においてカルシウムの代償的な役割を担っている可能性が考えられた。【方法】ラット大腿骨(n=24)に対して、みぎ大腿骨に直径1.5mm、長さ3mmのチタン(Ti)またはマグネシウム(Mg)金属を埋入し、ひだり大腿骨にShamオペを施行しコントロールとした。術後3日、7日後に両大腿骨を採取、液体窒素で即時冷凍保存し、全検体に対して次世代RNAシーケンス(RNA-Seq)による発現変動遺伝子を調査した。遺伝子解析にはDNB-SEQ (MGI社,、MGISEQ-2000RS)を使用し、得られたRNA-Seqデータは総リード数を100万リードで正規化しCount per million値(CPM)を計測した。骨形成(骨芽細胞分化): BMP2、runx2、骨形成抑制:grem1、twsg1、破骨細胞活性:ctsk、Dc-stamp遺伝子を対象に発現遺伝子量を比較した。【結果】術後3、7日のMg埋入群でBMP2, runx2の発現量の上昇が認められ、grem1、twsg1は術後7日Mg埋入群で上昇傾向を示した。Ti埋入群とShamオペ群では遺伝子発現量に明ら差は認められなかった。
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