研究課題/領域番号 |
21K21055
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
大堀 悠美 東北大学, 歯学研究科, 助教 (70908441)
|
研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
|
キーワード | 歯胚再生 / 間葉系幹細胞(MSC) / 神経堤 / 器官原基法 |
研究実績の概要 |
歯の欠損に対する従来の人工材料を用いた補綴治療に対し,天然歯と同等の構造・機能回復が可能な歯胚再生療法が新たな治療法として期待されている.胎生期に歯胚を形成する歯原性細胞は出生とともに失われるため,歯原性細胞を用いた歯胚再生の臨床応用は倫理的に困難であった.その解決策として成体由来細胞による歯胚の再生が試みられ,骨髄間葉系幹細胞(BMSC)による歯胚構造の再生が報告されたが,その再生効率が低いことが課題となっている.そこで申請者は歯胚の発生過程に着目し,歯原性間葉と同じ神経堤由来細胞を用いることで歯胚再生効率が向上するとの仮説を立てた.神経堤由来細胞を永続的にトレース可能なP0-cre/CAG-CAT-EGFPマウスを用いてP0陽性神経堤由来BMSC・P0陰性BMSCを分取し,歯胚再生を試みることで,発生由来に基づいたBMSCによる歯胚再生効率を検討する.さらに当研究グループは,BMSCを浮遊振盪培養することで,神経堤様の性質を有するMSC細胞塊を形成することに成功した.そこで分取した神経堤由来BMSCからMSC細胞塊を形成することで,さらなる歯胚再生の効率化を試みる. まずP0-cre/CAG-CAT-EGFPマウスからのP0陽性・陰性BMSCの採取を試みた.当該マウスの大腿骨骨髄より骨髄細胞を採取し,フローサイトメーター(FACS)を用いてP0陽性あるいは陰性細胞を分取した.使用する抗体やFACSの分取条件の検討を行い,細胞の分取に成功した.しかしながら採取できた細胞数が想定よりも少なかったため,今後の実験に適用することは困難であった.そのため,今後は磁気ビーズ標識抗体による分取等,他の方法を使用して実験を進められるか検討する.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本実験ではP0-cre/CAG-CAT-EGFPマウスからのFACSを用いた細胞分取を予定しており,抗体やFACS条件を検討も行ったが,実験のために使用できる細胞数を得ることが困難であった.これらの条件検討が想定よりも難航したため,予定していた研究計画よりもやや遅れをとることとなった.今後は磁気ビーズ標識抗体等,他の方法による細胞分取を試みて,実験の遅れを取り戻す予定である.
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究実施計画では,①P0-cre/CAG-CAT-EGFPマウスからの効率的な細胞分取方法の検討,②神経堤由来BMSCの歯胚再生能力の検証と③生体幹細胞を用いた歯胚再生の評価を計画する. ①P0-cre/CAG-CAT-EGFPマウスからの効率的な細胞分取方法の検討として,FACSを用いた方法が困難であった.その一つの原因として抗体標識や分取時の機械的刺激による細胞へのダメージで細胞の生存率が低いことが考えられる.そこで磁気ビーズ標識抗体による細胞分取を検討する.この方法であれば,FACSを用いた方法よりも細胞への機械的ダメージを大幅に減少させることが可能となり,より多くの細胞を得られることが期待される. 次に②神経堤由来BMSCの歯胚再生能力の検証において,マウス胎仔より分取した歯胚上皮細胞とP0陽性神経堤由来MSC・P0陰性MSCから形成したMSCスフェアを組み合わせてマウス腎皮膜下に移植することで歯胚再生を試みる.予備実験において歯胚上皮細胞とMSCスフェアを組み合わせたところ,一部歯胚様構造の形成を認めた.その出現頻度が過去の報告よりも高かったため,神経堤由来細胞を用いたP0陽性MSCスフェアによるさらなる歯胚再生効率化が期待される. 最後に③生体幹細胞を用いた歯胚再生の評価を行う.当研究グループが独自に開発したiPS細胞由来歯原性上皮細胞と歯胚再生効率の高いMSCスフェアを組み合わせることで,歯胚の再生を試みる.この方法が成功すれば,成体幹細胞のみでの歯胚再生が可能となる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
申請者は令和3年10月から令和4年3月まで産前産後および育児休暇を取得しており,その間研究を休止していた.そのため,当該補助事業期間の延長申請を行い,令和5年3月までの期間延長が認められた.研究期間の延長にともない,当初の研究計画を後ろ倒しにして実施するため,当該助成金が生じた.当該助成金は,トランスジェニックマウスP0-cre/CAG-CAT-EGFPマウスからの細胞採取・細胞培養・移植実験に使用する予定である.
|