研究課題/領域番号 |
21K21072
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
白川 智彦 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (50908225)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 骨格筋代謝 / Slitrk1 |
研究実績の概要 |
Slit and Trk-like protein 1 (Slitrk1)は神経細胞の樹状突起伸長に関わる膜タンパク質で,自閉症や多発性の筋収縮を主体とする運動性チックを呈するトゥレット症候群の原因遺伝子の1つである.これまでにトゥレット症候群の骨格筋に対する解析は行われていない.そこで本研究ではSlitrk1の骨格筋における役割を検討する事を目的としている. 骨格筋におけるSlitrk1の発現をリアルタイムPCR法で確認したところ,マウス骨格筋にSlitrk1が発現していることを確認した.マウス前脛骨筋にカルディオトキシン(CTX)を注入して骨格筋の再生を誘導した.Slitrk1はCTX注射後3日で最も発現が高く,その後発現は低下した。マウス前脛骨筋の断面積(CSA)を計測すると,野生型マウスと比較してSlitrk1ノックアウトマウスでCSAが減少傾向にあった. 野生型マウスおよびSlitrk1 nullマウスの骨格筋から筋サテライト細胞を単離・培養し,細胞増殖のマーカーとしてKi67の遺伝子発現を,筋分化マーカーとしてMyogeninやMyHC1の遺伝子発現を免疫染色法で評価した.Slitrk1 nullマウス由来筋サテライト細胞では,MyogeninやMyHCといった筋分化マーカーの発現が増加したが,増殖マーカーであるKi67の遺伝子発現は変化しなかった.Slitrk1 nullマウスの筋はサテライト細胞が十分増殖できずに早期に分化融合が亢進することで,結果として筋線維が小さくなると考えられた.Slitrk1は骨格筋分化や筋再生の初期に発現が上昇し,正常な骨格筋形成に必要であることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルディオトキシンを用いたマウス骨格筋の再生誘導の手技が確実に行えるようになった.また筋サテライト細胞の単離を行い,分化誘導の実験を行えており,今後実験予定である骨格筋分化とSlitrk1の関係性を調べる土台は整っている. マウスの飼育環境や実験環境は確保されているため,今後十分に実験を進めていくことが可能である.
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今後の研究の推進方策 |
マウス前脛骨筋にカルディオトキシン(CTX)を注入して骨格筋の再生を誘導したところ,野生型マウスと比較してSlitrk1ノックアウトマウスでCSAが減少傾向にあった.CSAの減少の要因として,骨格筋分化・細胞増殖・骨格筋萎縮など様々な影響を受けるが,Slitrk1が影響を与えるメカニズムを検討していく.
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は学会発表がオンラインで行われたこともあり,旅費の申請額が抑えられた.次年度は本年度で得られたデータに加え,追加実験を行い,多数の学会発表および論文投稿を行う予定である.
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