研究実績の概要 |
これまでに、オキシトシン受容体が象牙芽細胞に存在し、オキシトシンが象牙芽細胞様細胞の分化、および石灰化を促進することを明らかにした。今回、半導体レーザーを歯髄培養細胞に照射すると、象牙質様石灰化物の形成が亢進することを明らかにした。そして、Real-Time PCRによって、培養細胞中のDspp,Bgpの増加を確認し、象牙質形成の促進を確認した。すでにWntシグナルカノニカル経路は、象牙質形成に重要な経路として知られている。そこで、Wntシグナルのマーカーである各種Wntシグナルのマーカー(Wnt10a,Ectodin,Axin2,Runx2)を調べたところ、レーザー照射を行なった歯髄培養細胞中でWntシグナルカノニカル経路が亢進していることが明らかとなった。また、オキシトシン受容体を介した象牙質形成にWntシグナルが亢進することがわかっていることから、レーザー照射による象牙質形成促進作用を確認した。このメカニズムを解析するために、レーザーを照射した歯髄培養細胞中のオキシトシン受容体をmRNAレベルで分析したところ、レーザーを照射した歯髄培養細胞中のオキシトシン受容体が有意に増加したことから、レーザー照射による象牙質様石灰化物形成の亢進は、オキシトシン受容体を通して、Wntシグナルカノニカル経路を介することが示唆された。また、オキシトシンの覆髄剤としての臨床応用に向けて、オキシトシンの分子量や構造を変化させた化合物を作成し、その作用を歯髄細胞培養系を用いて評価している。また、ラットの脛骨にレーザーを照射したところ、骨髄側に新生骨の形成を認めた。現在、レーザーを照射した部位の骨組織における局所のオキシトシン受容体の発現量を検索中である。
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