• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

小児期の恐怖記憶によるストレスに起因する疼痛下行抑制系経路の可塑的変化

研究課題

研究課題/領域番号 21K21077
研究機関日本大学

研究代表者

松村 幸恵  日本大学, 歯学部, 専修医 (00906373)

研究期間 (年度) 2021-08-30 – 2023-03-31
キーワード中脳水道灰白質 / パッチクランプ / 免疫組織学的解析 / 光遺伝学的手法
研究実績の概要

小児期の強制的な治療などの苦痛体験は,歯科恐怖症の既往歴で多くみられる。しかし,歯科恐怖を大幅に軽減できる意識下の治療法は未だ確立されていない。歯科恐怖症の患者は恐怖心により歯科治療が困難となり,症状が悪化した状態で初めて歯科医院を訪れることから,生活のQOLの低下とともに,口腔内の健康が著しく損なわれている可能性が報告されている。記憶形成や情動への関与には海馬や扁桃体で多く認められ,島皮質は,疼痛閾値の決定に重要であるだけでなく,不安や,恐怖記憶の形成にも関与している。中脳水道灰白質は,情動の中枢とされるこれらの大脳辺縁系から,直接あるいは視床下部を介して入力を受け,疼痛抑制作用の他に不安・恐怖などの情動行動にも寄与していると考えられている。そこで,中脳水道灰白質に着目し,中脳水道灰白質に投射するストレス関連脳領域を同定し,中脳水道灰白質ニューロンに対するストレス関連領域からの投射によるシナプス応答を解析することによって,中脳水道灰白質のストレスによる痛み調節のメカニズムを明らかにすることを目的として実験を行った。まず,中脳水道灰白質におけるニューロンの形態や細胞学的特徴を把握するために免疫組織学的解析を行った。手順としては,まず,VGAT-Venus-ChAT-TdTomatoトランスジェニックラットの脳スライス標本を作製し,ホールセル記録の際に使用する電極内液にバイオサイチンを添加して細胞をラベルする。続いて,ABC法やDABの発色を用いてバイオサイチンで標識した細胞を可視化し,ニューロントレーシングを行った。腹外側部中脳水道灰白質に存在するニューロンタイプは,異なる膜特性を有するコリン作動性ニューロンや抑制性ニューロン、またどちらにも分類されないニューロンの3種類が存在していることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の目的は①ストレス負荷時に腹外側中脳水道灰白質に投射ニューロンを送っている脳領域についての検討②光刺激による興奮性シナプス後電位の応答の解析③ストレスモデルにおいて中脳水道灰白質を含むスライス標本を作製して光刺激による興奮性シナプス後電位の応答の対照群を比較することであったが、①ストレス負荷時に腹外側中脳水道灰白質に投射ニューロンを送っている脳領域の検討について,目的としている部位に逆行性トレーサーを注入する必要があるが,吻尾側的に長い脳領域である中脳水道灰白質において注入座標の決定に訓練を要しているため時間がかかり,終了していないため現在の進行状況に関してはやや遅れている。

今後の研究の推進方策

今後は,心理的ストレスが疼痛抑制作用を担う腹外側中脳水道灰白質の興奮性シナプス後電位をどのように変化させるのか,以下の順で研究を行っていきたい。
①ストレス負荷時に腹外側中脳水道灰白質に投射ニューロンを送っている脳領域について検討するために,腹外側中脳水道灰白質に逆行性トレーサー(コレラトキシン) を注入し,続いて幼若期ストレスとして,ラットが生後3週齢時に拘束下にて軽度な電撃フットショックを負荷する。続いて,c-Fos陽性細胞の定量的解析を行う。
②①で同定したストレス関連領域にチャネルロドプシン2を発現させるアデノ随伴ウイルスベクターを注入し(AAV),中脳水道灰白質を含むスライス標本を作製して,光刺激による興奮性シナプス後電位の応答を解析する。
③ストレスモデルにおいて中脳水道灰白質を含むスライス標本を作製して光刺激による興奮性シナプス後電位の応答の対照群を比較する。

次年度使用額が生じた理由

予定していた学会の参加をとりやめたり,動物実験棟の引っ越しにより実験期間が短くなったため,残金が生じた。
次年度の繰越金は、令和4年度の助成金と合わせて,ストレス負荷時に腹外側中脳水道灰白質に投射ニューロンを送っている脳領域についての同定ならびに,光遺伝学的手法を用いて,心理的ストレスが腹外側中脳水道灰白質の興奮性シナプス後電位をどのように変化させるのかをパッチクランプ記録を行い,検討するための物品費として使用する。

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi