本研究では、MLSTを使用して早期消化管癌患者21名の胃と口腔ピロリ菌のゲノムシークエンスを行った。Nested PCR法を用いた口腔試料からのピロリ菌DNAの検出及び、口腔試料(唾液、舌苔、デンタルバイオフィルム(上下顎前・臼歯部)からDNAを抽出し、全ての被験者の胃と口腔からピロリ菌DNAを得ることができた。口腔サンプルでは特に上顎前歯部歯肉縁上バイオフィルムで多く検出された (71.4%)。 検出されたDNAに対してMLST(Multi locus sequencing typing) 解析に用いるハウスキーピング遺伝子を対象にした8種のプライマーを用いてピロリ菌DNAを検出した。DNA量はNested PCRを行っても収量が少なかったため、Allele解析に使用できたものはサンプルによって0から8種であった。得られた増幅産物はPubMLSTウェブサイトにてAllele解析を行った。8種全てのAllele解析ができたのは1人の被験者のみであった。また1人の被験者は一つもDNA増幅産物が得られなかったためMLST解析には使用しなかった。MLSTの結果では、胃と口腔から得られた遺伝子型のうち1つのサンプルでのみ一致する遺伝子型を確認できた。そのほかの被験者から得られた遺伝子型は類似しなかった。 Allele解析にて得られた7つの遺伝子型それぞれを用いて系統樹解析を行った。この研究で得られた胃と口腔のピロリ菌遺伝子配列は主にアジアの分離株に集約されていた。2つ以上の対立遺伝子が得られたサンプルで得られた系統樹では、ほとんどのサンプルで胃と口腔のピロリ菌DNAに多様性が見られたが、6つのサンプルで口腔のピロリ菌DNAは胃由来株と類似した配列を有することが確認された。 以上のことをInternational Journal of Molecular Sciencesに発表した。
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