研究課題/領域番号 |
21K21085
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岸本 聡子 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (70912228)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 口腔癌 / Wntシグナル / EMT(上皮間葉転換) / CSC(癌幹細胞様細胞) |
研究実績の概要 |
令和3年度は、RT-PCR法において、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株で発現の上昇が認められたWnt5bについて、その親株であるヒトOSCC細胞のSAS細胞と、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株におけるWnt5bの発現を、RT-qPCR法にて定量的に検討した。その結果、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株は、細胞濃度依存的にWnt5bの発現量が増加する傾向にあることがわかった。また、Wnt5bの受容体とされているFrizzled受容体およびRor2受容体にも同様の傾向が認められた。親株であるSAS細胞のWnt5b発現量とFrizzled受容体およびRor2受容体の発現量は細胞数と相関なくほぼ一定であり、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株でみられたような傾向は確認できなかった。他臓器の悪性腫瘍において、腫瘍細胞の増殖や遊走能および浸潤能に寄与しているとされるWnt5aの発現は、親株およびヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株ともにその発現はほとんどみらなかった。このことから、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株およびその親株であるSAS細胞においては、Wnt5bの発現が優位であると考えられた。Wnt5bは分泌性タンパクで、オートクリンあるいはパラクリンシグナルにより活性化することから、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株では細胞濃度依存的に増加したことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Wnt5bについて、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株とその親株であるヒトOSCC細胞のSAS細胞におけるWnt5bの発現をRT-qPCR法にて検討したが、安定した結果を得るまでの条件検索に時間を要した。 また新型コロナウイルス感染症蔓延に対する施策により十分な時間が確保困難で、予定より計画が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
Wnt5bの受容体とされているFrizzled受容体およびRor2受容体とWnt5bの発現に相関性がみられたことから、Wnt5b分子の発現制御因子についてさらに検討を進める。またSAS細胞以外においても同様の検討を行う。 ・引き続きWnt5bによるEMT関連遺伝子の変動やCSCマーカーの発現の解析を行う。 ・新たに、EMT促進因子であるTGFβを用いて、Wnt5bとの関連を検索する。 ・in vivo実験においては、マウスOSCCのマウス頸部リンパ節高転移株を用いて、ヒトOSCC細胞のマウス頸部リンパ節高転移株との比較を行う。
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