研究実績の概要 |
超高齢社会を迎えた我が国において,骨粗鬆症患者は約1,300万人に達し,年々増加している。骨粗鬆症の進行に伴い大腿骨近位部骨折や椎体骨折などが生じると,日常生活能力(ADL)が低下する大きな要因となる。そのため,骨粗鬆症の進行を抑制するために,BP製剤や抗RANKL抗体薬等の破骨細胞を標的とした薬剤の投与が推奨されている。これら既存の骨粗鬆症治療薬は病的骨折を効果的に予防できるため,内服する高齢患者数が増加している。しかし,大きな副作用の一つとして,顎骨壊死(MRONJ)の発症があり,その対応が歯科臨床現場では大きな問題となっている。そこで本研究では,既存薬とは異なる機序で破骨細胞の分化誘導を制御しうる真菌二次代謝産物TerreinがMRONJ発症病態に及ぼす影響を免疫学的視点から検証することを目的とする。 実験群に,①Terrein投与群(10-30 mg/kg),②BP製剤,または抗RANKL抗体投与群,③PBS投与群,の3群を設定し,対照群(偽手術[sham]マウス)に④PBS投与群を設定し,抜歯窩の治癒病態に各薬剤が及ぼす影響について検討中である。具体的には,骨粗鬆症を誘導開始(卵巣摘出)と同時に各種試験薬を投与し(腹腔投与は週2回),卵巣摘出4週目にマウスの上顎第一大臼歯を抜歯し,さらに4週間試験薬の投与を継続して,卵巣摘出8週目に抜歯部の炎症状態をライブイメージング評価(XenoLight Rediject Inflammation ProbeおよびIVIS spectrum)を行った。その後,安楽死させ,上顎骨および大腿骨組織を摘出して,硬組織の状態をマイクロCT画像解析によって評価した。マイクロCT解析後のサンプルを用いて,パラフィン切片を作成し,抜歯部および大腿骨成長板下部における破骨細胞への分化状態はTRAP染色を用いて組織学的に評価した。
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