研究課題
本研究はアメロジェニン・GRP78複合体が免疫応答や創傷治癒等に与える影響、およびそこに至るまでの分子メカニズムを解明するため、複合体の構造解析により複合体の核内移行の機序や生理的機能を解明することと、またGRP78を誘導するテプレノンにより、人為的にこの複合体の活性増強が可能かを検証することを目的としている。これらの結果をもって、テプレノンとアメロジェニンの複合投与による新しい歯周組織再生療法を開発すると共に、歯髄の再生に応用可能か否かについて研究の展開を図る。現在までの研究成果は以下の通りである。まず、テプレノン処理によりhPDLCsのGrp78タンパク質発現が増加し、細胞遊走が促進されることが判明した。一方で、テプレノン処理はtype-1 collagenやalkaline phosphataseまたはrunt-related transcription factor 2 (Runx2)の発現を抑制することでhPDLCsの骨分化能を抑制した。次にマイクロアレイ分析により、Grp78発現の増加が起点となり、血管新生や創傷治癒に関与するangiopoietin-like 4 (angptl4) やアンフィレグリンの発現が確認された。 また、これらの発現にはhypoxia-inducible factor 1 α (HIF-1α)およびperoxisome proliferator-activated receptors (PPARs)の活性化、さらに、cAMP response element binding protein (CREB)およびprotein kinase A (PKA)のリン酸化が必須であることが明らかとなった。したがって、GGAとアメロジェニンの複合作用は、歯周組織創傷治癒に適した環境を作り出し、歯周組織再生のための新たな治療法の開発を促進させることが期待される。
2: おおむね順調に進展している
アメロジェニン・テプレノンの複合刺激において、培養細胞の細胞機能解析の詳細が判明しつつあるが、動物実験と構造解析の成果は遅れているため、上記区分とした。
今後は、アメロジェニン・テプレノンを添加した場合の細胞機能を探索し、創傷治癒に欠かせない血管新生誘導因子の産生を計測する。また、ヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) の管腔形成が誘導されるかを解析する予定である。
【理由】本年度は培養細胞実験が中心で、経費のかかる動物実験がやや遅れている。動物実験の研究を次年度中心に行なうため、これを次年度に繰り越した。【使用計画】歯周組織再生の評価を検討するため、ラットの歯槽骨に人工的骨欠損を作製する、または結紮糸により歯周炎誘導性骨吸収を惹起させ、その部位にテプレノンおよびアメロジェニンを投与後、飼育を行なう。経時的な炎症の抑制や血管新生の度合い、および歯根膜遊走による歯周組織再生の程度を免疫組織化学的に解析し、同時に副作用による異常所見や周囲組織の癌化の有無等を経時的に観察する。併せてマウス歯周炎モデルに対する効果も検討する。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件)
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