研究課題/領域番号 |
21K21093
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
矢野 良佳 九州歯科大学, その他部局等, 医員 (10911050)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | CAD/CAM / 生体模倣 / エナメル質 / 象牙質 / 接着 |
研究実績の概要 |
既存のCAD/CAM冠用コンポジットレジンの力学的性質は歯質と異なり接着性も改善が必要と考えられる。本研究の目的は、歯質と同じ力学的性質と高い接着性を兼ね備えた次世代CAD/CAMブロック素材の開発である。本年度は、シリカとポリヒドロキシメチルメタクリレート(PHEMA)からなる共連続構造体の作製に取り組んだ。 まず、ナノシリカの懸濁液を乾燥させた後、950℃で焼成することで多孔質シリカを得た。この多孔質シリカに対し、70%HEMAと30%エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)および過酸化ベンゾイルを含むモノマー溶液を含浸させ、80℃で重合することでブロック状のSiO2/PHEMA共連続構造体を得た。ブロック試料を所定のサイズに加工してすることで評価試料を得た。試料のビッカース硬さ試験、三点曲げ試験、表面自由エネルギー解析、剪断接着試験にて評価した。 試料のビッカース硬さは約120、弾性係数は約14GPaを示したことから、エナメル質よりも象牙質に近い素材であることがわかった。また、表面自由エネルギーの極性成分は、約20mN/mを示した。この値は、既存のフィラー分散型のコンポジットレジンよりも大きかった。このことから、新規SiO2/PHEMA共連続構造体はシランカップリング剤と反応性が高い性質をもつと考えられる。新規SiO2/PHEMA共連続構造体に対するレジンセメントの接着強さは高く、特にシランカップリング剤を使用した場合に高接着性が獲得できることが示唆された。これらのことから、SiO2/PHEMA共連続構造体は象牙質に近い力学的性質と高い接着性をもつCAD/CAM用材料として期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新しい素材の開発ができた。目的とする物性を達成することはできなかったが、今後の開発に対して有用な知見が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ジルコニア骨格をもつ共連続構造体の試作を行い、高強度が達成できるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、コロナ禍の影響により、学会発表のために計上していた旅費を使用できなかった。また、実験消耗品も予想より少なくなった。次年度は、必要に応じて実験装置などを購入する予定である。
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