研究課題/領域番号 |
21K21096
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
相馬 智也 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (10624637)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 骨代謝 / 顎骨壊死 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
薬剤関連顎骨壊死動物モデルは、これまでにも報告されてきたがその多くは薬剤に焦点を当てた研究である。骨吸収抑制剤は全身投与にも関わらず、歯科口腔外科領域の顎骨や耳鼻咽喉科領域の外耳道など限られた部位にしか壊死が発症しないという観点から、薬剤だけでなく口腔内常在菌による感染が発症に寄与していることが予想される。そこで本研究では、ゾレドロネートの投与と口腔内常在菌により骨壊死がどのように生じるのかについて、解析をすすめている。 口腔顎顔面外科領域では口腔内疾患の多くに骨吸収や骨破壊などを伴う炎症性疾患が多く認められる。ビスフォスフォネート製剤などによる骨吸収製剤の副作用である薬剤関連顎骨壊死も炎症を伴う骨破壊性疾患のひとつである。 申請者らはこれまで、ビスフォスフォネート製剤を投与したマウスを用い、ブドウ球菌接種による感染性骨壊死マウスモデルで、IL-1,IL-6,IL-17,TNFαなどの炎症性サイトカインが、骨壊死の発生や破骨細胞を介した骨破壊を引き起こすことを明らかにした。本研究では、よりヒトと病態を近づけるために、マウスの下顎骨を抜歯したモデルで口腔内に菌をとどめ、顎骨においてもこれまで大腿骨で起きていた骨壊死がみられるか研究を進めている。またヒト検体を用いて、TUNEL、TNFα、F4/80の免疫染色を行ったところ、マウスと同様の結果がみられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顎骨壊死モデルとして、これまでマウスの大腿骨骨髄内にMSSAを投与しボーンワックスを用いて骨髄内に生菌をとどめていたが。マウスの歯を抜歯した上で口腔内常在菌をとどめることで、よりヒトの顎骨壊死モデルとして病態に近似させることができると考える。マウスの歯を抜歯する際に、ヒトと比較し歯が非常に小さいことより、顎骨も一緒に破壊してしまい、手技的に非常に困難であったが、手技が安定しており安定的なモデルで解析を行う事が出来ている。また、ヒト検体を用いて、免疫染色を行ったところ、マウスと同様の結果がこれまでみられている。
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今後の研究の推進方策 |
ヒト顎骨の手術での摘出検体を用いての解析は、外科的切除の適応が限られているためこれまでの報告も少ない。そこで、当科では倫理委員会の承認を得て、ヒト顎骨の摘出検体を用いて、アポトーシスの解析を目的としたTUNEL、TNFαの免疫染色をはじめ、他の炎症性サイトカインの発現など、件数を増やし解析を進めていきたいと考えている。また、今後、確立しているマウスの抜歯モデルを使用し、さらに実際の病態に近いモデルを用いて骨破壊性疾患の分子メカニズムの解明を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入計画を行っていた機材が新型コロナウイルス感染症のまん延により予定通りの納期で購入することが困難となり、次年度での購入となったため。
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