これまでに、血圧と塩味感受性の相関について、一定の見解は得られていない。本研究の目的は、高血圧の人と正常血圧の人が認知する日常味わう塩味の強さの違いを解明することである。そのために、独自に開発した溶液供給システムを用いて、認知した塩味の強さや、認知パターン(時系列変化)を過去の方法よりも高い精度で比較検討した。 昨年度、必要な機器の選定に、当初予定していたよりも時間がかかってしまった。本年度は、被験者のリクルート方法に関して研究計画の見直しを行い、それに伴って倫理審査委員会に変更の承認を得る必要があったため時間を要した。リクルートの開始時期は遅れたが、正常血圧の人については順調にリクルートを行うことができた。一方で、治療を受けておらず、服薬等を行っていない高血圧の人のリクルートは難航し、当初の予定人数に達しなかった。収集したデータについては、順次解析を行った。その結果、高血圧群は、正常血圧群と比べて認知する塩味強度は低い傾向があった。また、味を感じ始めるまでにかかる時間や最も強く塩味を感じるまでの時間についても、高血圧症の人は正常血圧の人と比べて遅い傾向がみられた。 本研究の結果より、高血圧症の発症前に味覚認知のデータからリスクの高い個人を特定し、的確な栄養・食育をすることで、循環器疾患の一次予防に大いに役立つことが再認識できたため、今後はさらに被験者数を増やし、研究を継続する予定である。
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