研究課題
本研究では第三世代ADモデルマウスを用いて、AD発症の危険因子のひとつである歯の早期喪失がADの発症メカニズムに及ぼす影響を明らかにすることを目的として、①ストレス状態、②アミロイド班とそれに伴う神経炎症、③シナプトフィジン形成量、④空間認知能の解析を行うこととする。2021~2022年度の実験では、理化学研究所より無償給与されたAppNL-G-F KIマウスを用いて両側上顎臼歯を抜去した群を早期喪失群、非抜去群をコントロール群の二群間で①ストレス状態、②アミロイド班とそれに伴う神経炎症、④空間認知能、③シナプトフィジン形成量の比較検討を行った。結果として、早期喪失群はコントロール群と比較し、血中CS濃度および海馬・大脳皮質の両領域におけるアミロイド斑、ミクログリア、アストロサイトの陽性面積の占有率(%)が有意に高値を示し、シナプス形成量は有意に減少していた。また、Morris水迷路学習テストにおいても早期喪失群はコントロール群と比較し、プラットフォームへの到達時間の延長がみられたことで歯の早期喪失が慢性ストレスとして作用した結果、上昇した血中CSが、アミロイド斑の形成を促進し、それに伴い生じた神経炎症がシナプス形成が減少し、空間認知能の低下引き起こしたと考えられた。2023年度では上記結果に加え、海馬および大脳皮質における炎症性サイカイン(IL-β、TNF-α)とタウタンパクのリン酸化の測定を追加で実施し、どちらにおいても早期喪失群がコントロール群と比較し有意に高値を示した。最終年度の結果を加えることにより、歯の早期喪失が慢性的なストレス要因であり、ミクログリアとアストロサイトの動員を活性化し、炎症性サイトカインの分泌を増加させ、神経炎症、Aβ沈着、リン酸化タウ蛋白質を悪化させ、ADモデルマウスのシナプス機能障害と空間学習障害を生じることが示唆された。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
Frontiers in Aging Neuroscience
巻: 16 ページ: -
10.3389/fnagi.2024.1361847