研究実績の概要 |
当初の目的であった退院後の医療介護サービスのバリエーションを検討するのに充分なデータを得ることは出来なかったが、得られたデータの解析を進めている段階でリスク調整の方法、病名判定アルゴリズム、各種パラメータの定義の変更による影響など、当領域の研究の発展のために明らかにすべき課題を発見できた。特に、生命予後だけではなく、機能予後に関するアウトカムを検討する際に必要なリスク調整について、二次データで適切に行う方法は確立されていない。そこで、本課題では医療介護のサービスを受ける高齢者のリスク調整方法(リスクスコア)についての検討を実施した。まず、国際的に注目されているが日本では検討が不十分であるリスクスコアとしてHospital Frailty Risk Score(HFRS)について、民間企業から入手した国民健康保険及び後期高齢者医療広域連合の加入者データを用いて検証した。65歳以上の入院患者(n = 343,358)におけるHFRSは、年齢、性別、併存疾患指数を調整した上でも、入院30日後および90日後の死亡リスク増加と関連することを明らかにした。また、HFRSの入院後30日および90日死亡のイベント判別の予測性能(Area Under the ROC Curve)は、それぞれ0.672と0.684であることを明らかにした。次に、提携している自治体が保有する医療・介護のレセプトおよび要介護認定情報を用いて、高齢者(n = 32,596)が将来的に要介護状態になる確率を算出するリスクスコアを開発・検証した。開発したリスクスコアは、要介護認定のイベント判別の予測性能を十分に有していることを明らかにした。これらの開発・検証したリスクスコアを用いて、大腿骨近位部骨折手術後の高齢者の退院直後に利用する医療・介護サービスの実態や予後についての検討を、今後の課題でとして進めていく予定である。
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