妊産婦の孤立解消を大目的とし、初産婦が孤立化する要因のひとつは、妊娠期に社会的ネットワーク形成の必要性を認識していないからではないかという仮説に着眼した。そこで本研究では、妊娠中と産後直後、および産後約半年という3度のタイミングで、同一の対象者に対し社会的ネットワークの必要性の認識、およびそもそも自分の認識の変化を産前に予測できていたかという点について、質問紙調査を実施した。 調査の結果、親や友人、専門職や子育て支援スタッフといったさまざまな相手と、さまざまな話題について話したい気持ちが、産後に増加していた。しかし、産前の予測と実態を比較すると、ほぼすべての話題について、相手別では友人と話したいという気持ちを、産前には低く見積もっていたことが明らかになった。すなわち、話したい気持ちを産前に正しく見積もれていないことが、妊娠期に社会的ネットワーク形成行動をとらない理由となっていたことが示唆された。また、パートナーと話したい気持ちは、妊娠中・産後直後と比較して産後半年に減少する傾向が見られ、また満足度も、産後半年に低下していた。ただし、パートナーに対する話したい気持ちは、3回のいずれのタイミングにおいても、他の対象者よりも高い値をとっている点に留意する必要がある。友人に対しては、話したい気持ちは産後直後に増加し、その気持ちは概ね維持された一方で、満足度が産後半年で低下していた。自由記述結果を分析すると、パートナーとは会話自体はしているが量の少なさや寄り添いの少なさに産前予測とのギャップがあり、友人は、そもそも会う機会が持てないことに不満を感じていた。親など親族や医師など専門職とは、産後直後に一時的に話したい気持ちが増加していたが、産後半年でその気持ちは再び低下に転じていた。これらの結果は、産後直後の経験者によるケアがいかに重要かを示唆する。
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