研究課題/領域番号 |
21K21121
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
渡部 純 自治医科大学, 医学部, 助教 (50910949)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 体組成 / 胆道癌 / サルコペニア / 骨減少症 / 術後合併症 / 予後 / 全生存 / システマティックレビュー |
研究実績の概要 |
研究1年次(2021年度)の主な成果は以下の3点である。 第一に、本研究の目的は、まず(1)システマティックレビューを用いて胆道癌の転帰に対する体組成の影響を検討することである。今回のシステマティックレビューにより、胆道癌手術を受けた患者において、体組成で評価したサルコペニアは術後合併症の発生率が有意に高く、無再発生存と全生存のリスクも独立して高いことを初めて系統的に明らかにした。これらの結果から、体組成で評価されたサルコペニアは術後合併症や予後に関係するため、治療を担当する医療チームはサルコペニアの存在を認識し、それに応じて与えるケアを調整する必要があることを示唆した(Watanabe J. Clin Nutr. 2022;41:321-328)。 第二に、骨密度(BMD)が低い状態である骨減少症は、転倒、骨折、施設入所、死亡のリスクが高く、健康関連のQOL、ひいては予後に悪影響を及ぼすため、がん治療におけるもう一つの重要な患者レベルの要因である。今回システマティックレビューとメタ解析の結果、消化器系がん患者における術前の骨量減少症は予後不良を予測することを初めて系統的に明らかにした。各がんにおいて骨量減少症がサルコペニアと独立して予後に影響することを考慮すると、骨量減少症はサルコペニアに先行する予後不良因子の早期マーカーである可能性があることを示唆した(Watanabe J, et al. Arch Osteoporos. 2022;17:33)。 第三に、臨床研究(後ろ向きコホート研究)の研究計画書を作成し、倫理委員会に諮り、臨床研究のデータベース作成し、結果解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
主な成果は以下の4つの英語論文出版である。 第一に、系統的レビューにより、体組成によって評価されたサルコペニアが胆道癌に与える影響について調べた(Watanabe J, et al. Body composition assessment and sarcopenia in patients with biliary tract cancer: A systematic review and meta-analysis. Clin Nutr. 2022;41:321-328)。 第二に、骨減少症が、消化器癌患者の全生存率と無再発生存率の低下と関連していることを示した(Watanabe J, et al. Prognostic value of preoperative low bone mineral density in patients with digestive cancers: a systematic review and meta-analysis. Arch Osteoporos. 2022;17:33)。 第三に、術後コーヒー摂取が腹部手術後の術後イレウスと入院期間を低下させることを示した(Nutrients. 2021;13:4394)。また、根治的順行性モジュラー膵臓脾臓切除術が予後に影響しないことを示した(J Hepatobiliary Pancreat Sci. 2022)。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年次の(2022年度)の主な目的は、(2)病院データベースを用いて、外科的切除した胆道癌患者に対して、胆道癌患者における体組成の影響を調べることである。 現在、臨床研究(後ろ向きコホート研究)の研究計画書を作成し、倫理委員会に諮り、臨床研究のデータベース作成、結果解析を実施した。今後の研究促進方策は、学会発表、論文作成を行うことである。具体的には、現在、研究1年次(2021年度)に明らかにした体組成で測定する骨量減少症はサルコペニアに先行する予後不良因子の早期マーカーである可能性を考慮し、術前骨減少症が胆道癌患者における生存に与える影響についての英語論文を出版する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で学会参加が難しかったため次年度使用額が生じ、論文発表の出版費用に当てる予定である。
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