本研究立案時は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大期の第4波の最中であった。その後デルタ株の流行した第5波を経て、オミクロン株への置き換わりを認める第6波を数えている。臨床像や治療法、感染対策への取り組みも都度変化しているが、一方で、マスク着用や手指消毒、ソーシャルディスタンス(或いはフィジカルディスタンス)が概ね常態となり、オンライン授業やリモートワークの普及など、良くも悪くも大きな生活様式の変化があることは否定できない。コロナ禍の生活様式の変化において外傷パターンにも変化が見られることについては既に複数の研究で指摘されているが、高齢者に注目した研究はない。世界でも有数の超高齢社会である本邦において高齢者問題は大きく、また豊富なデータは世界に先駆けて有用な情報を提供し得る可能性がある。本研究は、コロナ前後での高齢者外傷の疫学的変化を明らかにすることで、withコロナ時代の外傷の現在と未来の問題点の解明に寄与し、ひいてはよりよい外傷予防、外傷後ケアに資するものと考える。令和3年度は主に統計解析前の準備を行った。具体的には、2021年度の日本外傷データバンクの最新データを入手し、基本統計量の算出を行った。また、本研究に類似の先行研究をさらに収集、レビューし、コロナ前後の比較に用いる統計手法および入手する変数を検討した。また、研究立案時以降のCOVID19に関する社会動向の変化を整理し、本邦において本研究で明らかにしたい問題点について再度検討を行った。
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