2021年度から開始した本研究は,運動,認知課題,ADL訓練を組み合わせたマルチモーダル非薬物的介入の実行可能性と効果の可能性を検討するために,シングルケースABデザインを用いた調査を実施した.対象者は3名であり,施設に入所する認知症高齢者の認知機能,BPSD,ADLに対して,一定の改善および維持効果が期待できる可能性が成果として得られた.この成果については,2022年度に論文化し,国際誌に投稿,その後掲載された. 2023年度は,COVID-19の影響により,進捗の遅れが生じたため,期間延長として実施した.施設に入所している認知症高齢者の認知機能(記憶,視空間認知機能,実行機能を含む)およびBPSD,ADLに対するマルチモーダル非薬物的介入による効果について,ランダム化二群比較試験により検証した.介入群(21例)におけるマルチモーダル非薬物的介入は8週間実施され,対照群(19例)は通常ケアを継続した.そして,両群ともに更に8週間後,追跡調査を実施した.結果では,認知機能(記憶,視空間認知機能,実行機能を含む)およびBPSD,ADLに関する各得点の変化量を比較し,BPSDにおいて群間で有意な差を認めた.その他,群間での差はなかった.追跡結果では,視空間認知機能とBPSDにおいて有意な差を認めた.マルチモーダル非薬物的介入はBPSDを維持する効果が期待され,視空間認知機能に対しても持続効果が期待された.また,その他の項目においても悪化は確認されなかった.本研究の成果は論文として国際誌に投稿した.
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