研究課題/領域番号 |
21K21154
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研究機関 | 川崎医療福祉大学 |
研究代表者 |
小谷 優平 川崎医療福祉大学, リハビリテーション学部, 助教 (30909429)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | The Scenario Test / 対話測定 / 失語症者 / 認知症者 / 日本語版開発 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は失語症者および認知症者の検査式コミュニケーション評価尺度であるThe Scenario Test(以下、ST)日本語版の開発と、それを新機軸とする対話支援の提案である。そして本邦の地域に相当数存在する失語症者や認知症者の人間関係の希薄化への対策、社会参画に伴う彼らの生活満足度を増進させることに貢献を目指すことである。 具体的内容であるが、STは日常生活場面のイラストに応じた検査者と被検者のロールプレイから被検者のコミュニケーション能力を数値化する検査である。原版はオランダ語であり、それ以降英語版の開発、出版がなされている。本研究では英語版を用いST日本語版(以下、ST-J)を開発する。オランダ版、英語版の作者および出版社には許可を得ている。STの検査物品は図版イラストと採点フォーム、採点マニュアルから成るが、原作者や失語・コミュニケーション障害領域の研究協力者との協議を経てそれぞれの試案を作成した。これらは内容的妥当性を十分に満たすものと考える。 本研究の意義であるが、STは原版を除き英語、ドイツ語版があり、アジア圏で初めて本研究にて日本語版が完成し、コミュニケーション障害領域の研究が先進的な欧米諸国と同水準のアウトカム開発基盤ができた。今後の本研究は、本邦において失語症者や認知症者のコミュニケーション支援と社会参加の研究発展に寄与する点で大きな意義を持つ。 本邦では30年以上前からCommuncation ADL test初版(綿森1989)が唯一の検査式コミュニケーション評価尺度とされてきたが対話の評価や時代性の問題がある。そのような中ST-J開発に向けた研究は本邦の失語症者や認知症者のリハビリテーション支援をアップデートする点で大変重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
現在までに図版イラスト、採点フォーム、採点マニュアルの初版が完成した。すべて原作者からの助言、研究協力者である失語症・コミュニケーション障害領域の専門家との協議を経て作成しており高い内的妥当性を有している。図版イラストは日本文化に沿うように一部内容を変更した。採点フォームは日本文化に沿うことと日本の臨床家が検査を戸惑いなく行えるよう書式や検査教示の表法を変更した。採点マニュアルは臨床家が検査意義と検査方法を十分に理解できるよう文表現の変更や必要な加筆を加えた。
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今後の研究の推進方策 |
すみやかにST-J試案の内容的妥当性を高めてST-Jを完成する目的で予備的研究を開始する。サンプルサイズは0名~20名、検査者5名程度を予定している。被検者からイラスト、採点フォームの問題点、検査者からマニュアルの問題点を抽出し修正および加筆を行う。 予備研究の後に本調査を開始する。サンプルサイズは失語症者70名、健常者20名であり、ST-J、言語および実用コミュニケーション検査、QOLの検査も実施する。映像で採点した言語聴覚士複数の評価者間・内信頼性、および各検査結果との並存的妥当性、失語症と健常者間の点差算出から判別的妥当性を実証する。本研究が計画通り進まない時は検査方法、検査に修正を加え研究を進める。最終的に検査高得点群、低得点群間の異因子抽出や解析を基に、失語症者や認知症者への対話支援の提案を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた要因としてコンピューターなど設備品の額が総計として予定からズレが生じたことがあげられる。予備研究にて必要としていた印刷用紙やUSBメモリなど消耗品が不要であったことも、さらに一因である。次年度使用額は予備研究と本調査に必要となる印刷必要品やメモリディスク類の購入額に補填する予定である。
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