清拭は、入浴やシャワー浴ができない患者の皮膚を清潔に保つことで皮膚の恒常性を維持し、患者のQOLにも関わる重要な看護ケアである。特に、浮腫を有する高齢患者は、加齢に伴う生理的な変化に加え、皮膚が菲薄化・乾燥し、掻痒感やスキン‐テア発生のリスクが高く、適切なケアの実施が必要である。しかし、これまでの研究では、浮腫を有する患者の皮膚バリア機能を評価する角質水分量および経表皮水分蒸散量は不安定で、量的に評価することが難しい可能性が示唆され、介入による有効性を十分に検討できているとは言えない。本研究の目的は、浮腫を有する高齢入院患者の皮膚状態の評価方法を明らかにし、清拭プログラムの開発を行うことである。 浮腫を有する対象者における皮膚バリア機能評価に関する文献レビューの結果、現段階では経表皮水分蒸散量(TEWL)を用いた評価が多くなされていた。しかし、部位間で研究結果が異なることや、浮腫を有さない対象者との比較なされていないことなどが課題として挙げられた。これらの結果や先行研究を基に、健康成人への厚手ディスポーザブルタオルを用いた清拭の安全性および快適性の検証や皮膚が脆弱と予測される心臓疾患を有する対象者を対象とした清拭介入を実施した。その結果、綿タオルおよびディスポーザブルタオルを用いた弱圧の清拭は、心臓疾患を有する高齢患者の皮膚バリア機能を悪化させないことが示唆され、心因性の浮腫を有する高齢患者においても、皮膚バリア機能を悪化させない可能性が示唆された。また、感染予防の観点より使用される頻度が高まっているディスポーザブルタオルについて、密度が高く厚みのあるものを用いることで、タオル温低下を防ぎ、綿タオルと同等に皮膚温の大幅な低下や対象者の寒さを与えずに清拭を実施することができることが示唆された。
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