国内外の診療ガイドラインでは褥瘡発生予防のための体圧分散マットレス(以下、マットレス)の使用が強く推奨されている。本研究では、高齢者施設における褥瘡予防に対するマットレスの使用実態や褥瘡予防に対するマットレス導入における阻害/促進要因を明らかにすることを目的とした。実態の把握と実装における課題に対するアプローチの視点から、現場の改善に役立てることを目指すため、下記の2つの取り組みを実施した。 1.質的研究:2023年1月~3月に高齢者施設(特別養護老人ホーム、グループホーム、介護付き有料老人ホーム)に勤務する職員を対象とした対面またはオンラインでの半構造化面接を行った。Consolidated Framework for Implementation Researchを使用した内容分析の結果、各構成概念での阻害/促進要因が明らかになった(例:「外的セッティング」の阻害要因として「介護福祉用具のレンタル等が介護保険適用外の場合にマットレス導入への障壁」、促進要因として「訪問診療の医師/看護師との良好な連携」、「内的セッティング」の促進要因として「褥瘡リスクへのアセスメントの体制や多職種のチームでの対応」等)。本結果は2024年6月に開催される第66回日本老年医学会学術集会で発表予定である。また、論文投稿中である。 2.記述疫学研究:京都市統合データに登録されている要介護4または5に認定された人を対象として、① 褥瘡発症件数、② 褥瘡発生と介護度との関連、③ 介護保険でのマットレス適用の件数、④褥瘡発生日とマットレスの介護保険適用日との検討等より、褥瘡発生やマットレス使用の実態の検討に取り組んだ。現在、論文執筆中である。
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