研究課題/領域番号 |
21K21174
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研究機関 | 相模女子大学 |
研究代表者 |
下島 優香子 相模女子大学, 栄養科学部, 准教授 (60776029)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | Listeria属菌 / Listeria monocytogenes / 環境モニタリング / 3M病原菌自動検出システム / InSite L.mono Glo / 簡易法 / 代替法 |
研究実績の概要 |
2021-2022年に複合型そうざい製造業2施設(A、B)および食肉製品製造業1施設(C)において、Listeria属菌を対象として拭き取り検査を行った。公定法に準じた培養法に加えて、隣接部位について2種類の簡易代替法①3M病原菌自動検出システム(MDS)②InSite L.mono Glo(Glo)を用いて検査した。 施設Aで調理後の食材を扱う区域においても台車車輪、靴底、床から培養法によりL. monocytogenes(LM)が分離された。そのため下処理室を用いて清掃の効果検証を行った。床3カ所について清掃前、通常清掃後、炭酸次亜塩素酸水(塩素濃度150ppm)による殺菌後を培養法で比較すると、Listeria属菌はそれぞれ3カ所、2カ所、1カ所から分離され、低減効果が認められた。施設Bで製品(サラダ)からLMが分離された(血清型3b)。具材別ではソフトサラミとパストラミポークから同じ血清型のLMが分離された。それらは仕入品をスライスしているが、仕入品はListeira属菌陰性であり、スライサーの汚染が疑われた。スライサーはGloでListeria属菌陽性と判定され、分解清掃を行った。しかし稼働後培養法によりLM(3b)が分離され、スライサーに定着したLM除去の困難が示された。施設Cでは加工室床、スモークハウス前床、半製品冷蔵庫床、スモーク室から半製品冷蔵庫を経由し包装室まで移動する台車車輪等からLMが分離され、血清型はすべて4b(4e)であった。包装室へは靴を履き替えて入室するが、各区域を移動する台車車輪による汚染拡大防止が課題となった。 MDSによる結果のκ係数は0.68(Listeria属菌)および0.67(LM)であり一致性を示した。Gloでは0.63(Listeria属菌)および-0.01(LM)でありListeria属菌は一致性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食品製造環境から食品製品へのリステリア汚染対策および環境モニタリングに意欲的に取り組む製造業の品質保証部の方々と協同して拭き取り検査を行うことができた。また、相模原市と研究協力を結び、市内の食品製造業の環境モニタリングに着手することができた。各施設とも環境モニタリングによりリステリアの存在が明らかになり、清掃や動線等の課題を明確にすることができた。そしてそれらの課題への対策に取り組み始めている。また、第三者認証機関の認証を受けた簡易試験法として、AOAC OMA等の認証を取得した3M病原菌自動検出システムおよびAOAC PTMの認証を取得したInSite L.mono Gloを併用して、一致率を調べることができたので、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
L. monocytogenesが分離された食品製品は汚染菌量は<10 cfu/gと少量であったが、保存中の増減の可能性について調査する。食品製造環境由来株を対象に薬剤感受性試験および消毒薬耐性遺伝子保有状況を調査する。L. monocytogenesが陽性となった食品製造業において清掃方法や動線の変更・改良などの対策をとった後に、継続的に拭き取り検査を行い、より効果的な衛生管理手法について知見を蓄積していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
高額な消耗品を必要とする実験を予定していたが今年度は未実施であったため、次年度に繰り越すこととした。次年度は引き続き食品製造施設の施設数を増やして拭き取り検査を実施していくとともに、薬剤感受性試験等、分離株の解析を行う予定である。
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