研究課題
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、循環器疾患を合併し生命予後の悪化が明らかになったため、近年広く認知され始めている。しかし、治療が必要なOSAの大半が未診断であることが問題視されているため、OSAの早期発見・早期治療、さらには循環器疾患合併への予防対策が重要課題である。近年、DNAメチル化は疾病発生に重要な役割を果たし、疾患の発症予測、診断、予後予測に有用なマーカーとして注目されている。本研究の目的は、OSA患者の末梢血を用いてエピゲノムワイド関連解析(EWAS)によるゲノム網羅的DNAメチル化解析を行い、OSAとDNAメチル化との関連を明らかにし、OSAの新規バイオマーカーを樹立することである。2021年度は、OSA患者を対象にEWASを実施するための基盤構築を行った。具体的には、研究対象者の確保と研究倫理に対する基盤構築のため、本学の医学研究倫理審査委員会及び利益相反委員会へ研究の申請を行い承認を得た。その後、OSAの研究同意者を対象に検体・データの収集を始めた。またEWASの実施のために、外部測定機関の技術員やEWASの専門家、統計解析の専門家とともにEWAS解析手法及び統計解析手法の選定を行った。一方で、OSAは酸化ストレスを亢進させるため、抗酸化物質であるチオレドキシンが高値を示すことが報告されている。そこで、チオレドキシンに対する阻害作用のあるチオレドキシン相互作用タンパク質(TXNIP)遺伝子に注目しDNAメチル化解析を実施した。先行調査として生活習慣及び生活習慣病との関連について検討を行った。その結果、飲酒習慣を有する者やメタボリックシンドロームを有する者、動脈硬化を有する者ではTXNIP 遺伝子のDNAメチル化率の低下を認めた。今後は、TXNIP遺伝子もまたOSAの解析候補遺伝子として加え調査をすすめていく。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染拡大に対する病床数の確保により、OSA患者が終夜睡眠ポリグラフの検査を受けることができず研究対象者の確保が難航したため。
今後は、継続して研究対象者から検体・データの収集を行い、解析対象者が確保され次第、EWASを実施していく予定である。その後統計解析を実施し、OSAに関連するDNAメチル化サイトを評価する。本研究により、得られた知見は関連学会で発表を行い、論文化し学術雑誌へ投稿する。
新型コロナウイルスの影響により、研究対象者の確保が当初の予定より遅れ、研究計画に影響が生じたたためである。次年度では、エピゲノムワイド関連解析を外部測定機関に依頼し実施するため、その解析費用として使用していく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
The American Journal of Drug and Alcohol Abuse
巻: 48 ページ: 302~310
10.1080/00952990.2022.2037137
Endocrine Journal
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10.1507/endocrj.EJ21-0339