高齢化の進展とともに認知症高齢者数が増加の一途をたどる中、人生の最期までその人らしい尊厳が尊重された医療・介護を享受できる社会の実現が喫緊の課題である。介護保険施設は、認知症高齢者の生活を支える場として、“エビデンス”に基づく効果的な認知症ケアの実践が求められている。近年、介護保険施設等における専門多職種チームアプローチや職員の専門教育を受けた職員の配置が着目されている。本研究では、専門性の高い職員配置を評価した認知症専門ケア加算に焦点をあて、量的アプローチによる利用者アウトカムへの効果の検証および質的アプローチによるケアプロセスの変化の過程を明らかにすることを目的とした。 2021年度は、認知症患者・利用者ケアの質に関する文献レビューを進めるとともに、要介護認定情報・介護レセプト等情報(介護DB)分析のための基盤整備として、データ解析環境整備・データベース構築を進めた。文献レビューに関しては、認知症ケアの質にかかわると報告されている職員配置とアウトカムに焦点を当て、我が国におけるエビデンスの概観を捉えた。手厚い職員配置と患者・利用者アウトカムの関連については、統一的な結果は得られておらず、今後さらなる研究の必要性が示唆された。 2022年度は介護DBのデータ解析・成果公表を進める予定であったが、厚生労働省への第三者提供手続きに時間を要したため、データベース構築およびpreliminaryな分析実施にとどまった。今後構築したデータセットを用い、成果公表を行っていく予定である。
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