研究課題
この研究は、高齢者や障害者(要配慮者)のニーズに合った避難に必要な要素を日本と海外の事例を比較することで俯瞰的に明らかにし、今後の研究課題を提示することを目的として実施した。国内では水害で福祉避難所の開設・運営に関わった保健福祉や防災部門の県・自治体職員を対象に調査した。介護・医療サービスが必要な人は介護施設や医療機関に振り分けられ、実際に福祉避難所を利用した人は少数だった。要配慮者が家族や近所の人に助けられ、一般避難所で過ごした事例が確認された。福祉避難所となった保健センターは備品や設備が不十分だったことが確認され、生活する場としては介護施設等が適切かもしれない。福祉避難所の開設には県災害チームや県介護福祉士会との連携が重要だと示唆された。海外の対象国は洪水被害経験があるタイを選んだ。2022年台風7号(Mulan)で被災した2自治体(人口3万人程度)において、要配慮者の避難を支援した保健医療または防災部局の自治体職員合計3名を対象とした。避難に必要な要素に関する3テーマ<自治体とコミュニティとの協働>、<指揮命令系統の確立>、<地域ボランティア・民間企業等による支援>が抽出された。平時から自治体内で組織横断的に要配慮者に関する情報共有すると共に、自治体が県レベルともコミュニケーションを強化していくことが必要だと考えられる。さらに、平時から自治体とコミュニティが対話を続け、お互いに要配慮者の情報を把握し、防災対策を推進していくことの重要性が示唆される。災害対応には行政以外の民間組織や住民による支援の力を活用する可能性が示唆される。災害が多発している昨今、要配慮者の被害軽減に寄与する本研究の社会的意義は高い。今後は、要配慮者の避難場所について在宅避難も含め、更なる検討が必要である。2023年度は、国際学会で1回、国内学会で2回、研究成果を発表した。
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