研究課題/領域番号 |
21K21188
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
田中 宏和 国立研究開発法人国立がん研究センター, がん対策研究所, 研究員 (90905431)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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キーワード | 健康格差 / 公的統計データ / 人口問題 / 国際比較 / 公衆衛生学 / 死亡率 / 主観的健康感 / がん検診 |
研究実績の概要 |
本年度は総務省より国勢調査(2010年)と厚生労働省より人口動態統計死亡票(2010年から2015年)の個票データをそれぞれ取得し、統計のリンケージを実施した。性・生年月・居住市区町村・婚姻状況、配偶者の年齢(既婚のみ)の組み合わせをマッチング変数とし、このマッチング変数が他の人と重複しない日本人を抽出し追跡コホートとした。確定的リンケージ法(deterministic linkage)で死亡情報を国勢調査情報とマッチングした。全人口と追跡コホートの人口属性から逆確率となるように重みを算出し、重み付けした教育歴別年齢調整死亡率とその死亡率差および死因別寄与割合を分析した。分析の結果、男性ではがんと循環器疾患が同じくらい死亡率差へ寄与していた。女性では循環器疾患が最も死亡率差に寄与していたが、これは女性において教育歴による循環器疾患死亡率差が男性に比べて大きく、かつ、乳がんなど高学歴の方が死亡率が高いがん部位があるためがん全体の寄与が相対的に小さくなっているためと考えられる。これらの結果を第33回日本疫学会学術総会(浜松市、2023年2月)で発表し、最優秀演題賞を受賞した。 また、厚生労働省より国民生活基礎調査の個票データを入手し、がん検診受診率と社会経済要因の関連を分析した。分析の結果、2001年から2016年にかけて男女ともがん検診受診率は上昇していたが、社会経済的属性(職業・教育歴)によって大きな差があることが明らかになった。また、その差はより広がっている傾向が示唆された。これらの結果を第81回日本公衆衛生学会総会(甲府市、2022年10月)にて発表した。 さらに国際比較のために公的統計データの活用法を検討するため、国内外の文献をレビューしわが国でモニタリング可能な社会経済要因について論点整理を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って研究リソースの整備のため、統計法第33条に基づいて国勢調査などの個票データ取得のための申請を行いデータを整備した。総務省より国勢調査(2010年)と厚生労働省より人口動態統計死亡票(2010年から2015年)の個票データをそれぞれ取得し、統計のリンケージを実施した。性・生年月・居住市区町村・婚姻状況、配偶者の年齢(既婚のみ)の組み合わせをマッチング変数とし、このマッチング変数が他の人と重複しない日本人を抽出し追跡コホートとした。確定的リンケージ法(deterministic linkage)で死亡情報を国勢調査情報とマッチングした。全人口と追跡コホートの人口属性から逆確率となるように重みを算出し、重み付けした教育歴別年齢調整死亡率とその死亡率差および死因別寄与割合を分析した。分析の結果、男性ではがんと循環器疾患が同じくらい死亡率差へ寄与していた。女性では循環器疾患が最も死亡率差に寄与していたが、これは女性において教育歴による循環器疾患死亡率差が男性に比べて大きく、かつ、乳がんなど高学歴の方が死亡率が高いがん部位があるためがん全体の寄与が相対的に小さくなっているためと考えられる。こうした社会階層ごとの死因別の年齢調整死亡率の算出および推定は本研究の柱であり、これらの結果を得られたことで本研究は順調に進展しているといえる。また、国民生活基礎調査の個票データ取得のための申請を厚生労働省に行いデータを整備した。これらの結果も含めて、社会経済的属性(職業・教育歴)と死亡率との関連を分析し結果を学会発表できたため、おおむね順調に進展している。今後は学術論文としての発表を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
国勢調査と人口動態統計のリンケージ作業が完了したため、データを整備しさらに詳細な分析を予定している。さらに学会発表を行った研究テーマから学術論文としての発表を予定している。より精緻な死亡率推定のため、国勢調査と人口動態調査(死亡票)のリンケージに関して、より詳細な住所情報を利用できないか検討する予定である。また、国勢調査と人口動態調査(出生票)のリンケージを実施する予定である。国民生活基礎調査の分析では、糖尿病通院割合や高血圧通院割合などについて社会経済的要因との関連を分析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果を学術論文として発表するために研究期間を1年間延長した。このため、英文校正費用や論文掲載料を支出するため次年度使用額が生じた。また、学術学会での研究発表を計画している。
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