DNAメチル化及びDNA脱メチル化は、遺伝子配列に依存しない遺伝子発現の制御機構であり、様々な生活習慣病の発症と進展に関与していることが明らかとなっている。本年度は、2022年に実施された北海道二海郡八雲町の住民健診受診者(男性100名、女性149名、平均64.4歳)を対象に白血球DNAを抽出し、ヒトゲノム全体のDNAメチル化指標である5-メチルシトシン(5mC)とDNA脱メチル化の中間産物である5-ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)の割合を測定し、生活習慣病との関連について解析を実施した。5mCおよび5hmCは中央値より低い集団を低値群、高い集団を高値群と定義した。 5mCと5hmCは有意な正相関を示した(ρ=0.422、p<0.001)。性差は5mC、5hmCともに認められなかった。心疾患の既往歴者は5hmC高値群において有意に多いことが分かった(低値群1名(0.8%)、高値群10名(8.1%)、p=0.005)。性、年齢、喫煙習慣、飲酒習慣、Body mass indexで調整したロジスティック回帰分析でも同様に高値群で有意に高いオッズ比を示した。一方、5mCでは有意な関連を認めなかった。脳血管疾患の既往歴者は、5mC、5hmCともに高値群に多かった(低値群0名(0%)、高値群6名(4.8%)、p=0.014)。がん既往歴者に関しては、5mCおよび5hmCともに有意な関連を示さなかった。以上のことから、日本人集団において心疾患既往歴者では5hmCが脳血管疾患既往歴者では5mC、5hmCが高値を示すことが示唆された。
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