研究実績の概要 |
最終年度は,CECの初動者14名のうち看護職に焦点を当てて分析をした。同一理念のもと全国展開する急性期病院でCECチームに所属する看護職5名に同意を得て,対面で半構造化面接を実施した。得られたデータを帰納的主題分析(Boyatzis 1998)の手法を用い,生成されたコードを階層的に集約した。 研究参加者は3医療機関5名(CNS2,CN2,MW1名)であった。このうち4名が臨床倫理認定士を有していた。分析の結果,10のカテゴリ,37のサブカテゴリが抽出された。 初動者は,相談を受けた段階では,何が倫理的問題であるのかが明確ではない中,依頼者の声を積極的に傾聴し,困っている当事者は誰なのか,状況の確認から緊急性を判断し,カルテからの情報と合わせてデータを整理して,倫理的問題の本質は何なのかについて「当たり」をつけていた。そしてCECチームに速やかに得られた情報を報告し,チームでの聞き取り,倫理カンファレンスへと多職種での対応につなげていた。初動者には,CECに関する基礎知識に加えて,高いコミュニケーションスキルとケースの緊急性を判断するなどケースアセスメントスキルが求められることが明らかになった。 ASBHのコアコンピテンシーと比較すると,初動者はすべてのコンピテンシーは必要ないが,知識を含む倫理的アセスメントスキル,対人関係スキル,態度や姿勢を用いて対応していることが分かった。看護職が初動者になる場合,倫理コンサルテーションの基盤となる構えとして,ケースに対して一定の距離をもって俯瞰的,客観的にみるように意識することが必要であることが示唆された。 初動者には医師,看護師,MSW,事務職がおり,職種によるスキルの違いについては分析の途上であり,今後、新たな知見が出次第,学会等で成果報告をしていく予定である。
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