研究課題/領域番号 |
21K21208
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研究機関 | 国立保健医療科学院 |
研究代表者 |
中西 康裕 国立保健医療科学院, その他部局等, 研究員 (10908057)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 医療・介護レセプト / 百寿者 / スーパーセンチナリアン / 寿命 / 医療・介護費 / KDB / 要介護度 / 介護サービス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、奈良県及び長野県KDB改良データの大規模な医療・介護レセプトデータを用いることにより、百寿者(100歳以上)及び非百寿者(100歳未満)の死亡前1年間の保険診療・介護の利用実態を明らかにすることである。 令和3年度は、2013年4月~2020年3月までの7年間の奈良県KDBを用いて、死亡者の匿名化されたIDごとに死亡日から遡った1年間の入院及び入院外医療費、介護費、要介護度等のデータを抽出・集計した。抽出データは「人口動態調査」や「医療給付実態調査」、「介護保険事業状況報告」等の既存統計により妥当性を検証した。成果の一部は論文として海外英文ジャーナルに発表した。 奈良県の75歳以上の後期高齢者を対象とした死亡前医療費の分析では、百寿者の死亡前1年間に発生する医療費は非百寿者(75-99歳)と比較して低い傾向にあり、スーパーセンチナリアン(110歳以上)において最も低くなることが明らかとなった。しかし、死亡前1年間の介護費は、年齢が上がるにつれ減少する死亡前医療費とは対照的に、介護費は年齢が上がるにつれて増加する傾向にあることが明らかとなった。 また、介護サービスの提供実態を明らかにする研究の前段階として、奈良県KDBより抽出される要介護認定者数や通所介護等の介護サービス利用者数について、既存統計を用いてバリデーションを行った結果、抽出された要介護認定者数等は、「介護保険事業状況報告」で公開されている数値と9割以上一致することが確認できた。 次年度では、さらに糖尿病やがん、循環器疾患などの疾患別での解析方法を検討することで、死亡前1年間の医療・介護費や要介護度、介護サービス利用等の実態をより詳細に明らかにしたうえで、長野県KDBでも奈良県と同様の条件でデータ抽出・解析を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)奈良県KDB改良データを用いた死亡前医療費等の集計(2021年10月~2022年3月):奈良県KDBの対象期間(2013年4月~2020年3月までの7年間)における死亡者の情報をSQLを用いて抽出し、死亡者の匿名化されたIDごとに死亡日から遡った1年間の入院及び入院外医療費、介護費、要介護度等を抽出したうえで、既存統計等によりそれら抽出データの妥当性を検証。 (2)疾患情報を加えたさらなる解析等(2022年4月~9月):上記分析を土台として、さらに糖尿病やがん、循環器疾患などの疾患情報を加えて解析。また、奈良県立医科大学公衆衛生学講座と協同で長野県KDBの再データベース化を検討。 (3)長野県KDBを用いた分析(2022年10月~2023年3月):長野県KDB(2014年4月~2019年3月までの5年間)においても、奈良県と同様の条件でデータを抽出・解析。さらに、奈良県と長野県の解析結果を比較し、地域間の差異、あるいは類似する点を明らかにしたうえで、両県のデータを統合・解析。
上記の研究計画に従い、(1)の分析が予定通り進展した。2021年度の成果として、要介護度等の情報を考慮した死亡前1年間の医療・介護費のデータ抽出・集計方法が整備された。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画書に沿って、引き続き予定通りに研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度に分析用PCを購入予定であったが、令和4年1月時点で半導体不足によるPCの納品遅れが懸念されていたことから、納品が年度をまたがってしまう事態を回避するためPCの購入は令和4年度に行うこととした。また、それに伴いデータ分析用ソフトも令和4年度に購入を行うこととした。 研究の成果発表を海外等で行う予定をしていたが、新型コロナウイルス感染拡大による規制の影響で次年度に見送らざるを得なくなった。次年度以降も継続的に国際学会等での発表を予定しているが、海外渡航の可否は所属機関の方針に従い決定することとなる。
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