本研究の目的は、大規模な医療・介護突合レセプトデータを用いることにより、百寿者(100歳以上)及び非百寿者(100歳未満)の死亡前1年間の保険診療・介護の利用実態を明らかにすることである。 最終年度となる令和5年度は、2013年4月~2020年3月まで(7年間)の奈良県KDBを用いて、75歳以上の後期高齢者を対象に死亡日から2年間遡り医療・介護費の分析を行った。百寿者の死亡前2年間に発生する介護費の中央値は、いずれの時点においても非百寿者より高い傾向にあった。しかし、医療・介護費総額の中央値は、死亡前30日間では百寿者の方が低い傾向にあるものの、1年間まで遡るとほぼ一定となり、2年間まで遡ると百寿者の方が高い傾向にあることが観察された。 また、KDBより抽出された死亡者のICD-10に基づく病名(疑い病名を除く)や要介護度等の情報を抽出・集計した。死亡前医療費について、一般化推定方程式を用いることで、病名や要介護度等で調整した医療費を算出した。 さらに、在宅医療に着目し、死亡前30日以内に開始された在宅医療が医療・介護費に与える影響についても分析した。死亡前30日以内に開始された短期的な在宅医療(短期群)は、より早期に開始された在宅医療(早期開始群)と比較して、医療費は高く、介護費は低い傾向が示されたが、医療費及び介護費に有意な差は認められなかった。また、短期群は早期開始群よりも在宅ターミナルケア加算や看取り加算の算定者が多い傾向にあった。 長野県KDBを用いた分析については、個人に割り当てられた共通IDを用いることで、上記と同様の分析が実施可能であることが確認された。
|