研究実績の概要 |
パーキンソン病に対する脳深部刺激療法は, 薬剤治療の長期経過に伴って生じる運動合併症に有効とされている.しかし, 脳深部刺激療法による運動合併症の改善は, 患者の日常生活における身体活動の増加につながっているのか, 患者の生活の質向上にどのように貢献しているかについては不明である.本研究は,脳深部刺激療法前後のパーキンソン病(Parkinson’s disease; PD)患者を対象にウェアラブルの身体活動量計を用いて,患者の日常身体活動量と関連する患者の臨床的特徴は何か,治療による身体活動量の変化が患者の生活の質にどのように影響するかを明らかにすることを目的としている.脳深部刺激療法後患者の生活変化と生活の質の関連が明らかになれば, 手術適応を検討するうえで有用であるだけでなく, 実態に即した支援をするための医療及び福祉領域における基盤的事実になる. 本年度は,脳深部刺激療法術前および術後患者を対象に,活動量計データおよび神経心理学的検査データの取得・解析を行った.この解析は令和4年度まで及ぶ予定となっている。 当初予定していた研究参加患者数に達していないが,これまで取得したデータで得られた成果は,パーキンソン病患者の身体活動量計測に適した身体部位の検討や,治療の効果を生活機能の水準で捉えることに寄与する成果である. 令和3年10月から現在まで仙台西多賀病院に入院加療したPD患者5名が研究に参加した.そのうち脳深部刺激療法が施行された患者は3名であった.症例数がいまだ不十分であり,現時点では術後の身体活動量変化と生活の質変化の関連を検討することが困難であるが,本研究の遂行により令和4年度には検証可能となる予定である.
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