研究課題/領域番号 |
21K21212
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
土橋 康平 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (80912550)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | 呼吸性アルカローシス / 無酸素性代謝 / 低酸素 / 高強度トレーニング |
研究実績の概要 |
短時間の高強度運動パフォーマンス向上を目的として、アスリートは短時間高強度運動を行っている。この運動は解糖系などの無酸素性代謝を亢進させるため、トレーニングとして繰り返すことで無酸素性代謝能力が向上し、高出力のパワーを発揮することができるため、高強度運動時のパフォーマンスが向上する。低酸素吸入を行うと、常酸素環境下よりも短時間高強度運動時の無酸素性代謝を亢進させることが報告されている。また、近年では運動前に随意的に換気量を増加させる(自発的過換気) と、過換気を行わない場合より高強度運動時のパフォーマンスに影響せずに酸素摂取量が低下する、すなわち無酸素性代謝が亢進することが報告されている。従って、自発的過換気と低酸素吸入を組み合わせると、それぞれ単独の刺激より無酸素性代謝の亢進が起きるかもしれない。そこで本年度においては自発的過換気と低酸素吸入の組み合わせが30秒間の全力自転車運動時の呼吸代謝応答および運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討した。 健康な成人男性8名および女性4名を被験者とし、30秒間の全力自転車運動時の呼吸代謝応答および運動パフォーマンス(発揮パワー) を ①常酸素下で行う条件(自由呼吸)、②常酸素下で運動前自発的過換気を5分間行う条件、③低酸素下(高度5,000 m相当) で行う条件、および④低酸素下で運動前自発的過換気を5分間行う条件(組み合わせ)で比較検討した。高強度運動時の平均発揮パワーは条件間で差は見られなかった。無酸素性代謝の指標である酸素借は過換気および低酸素条件で自由呼吸条件より高値を示し、組み合わせ条件で過換気と低酸素条件よりも高値を示した。これらの結果から、自発的過換気と低酸素の組み合わせはそれぞれ単独の刺激よりも無酸素性代謝を亢進させることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、研究課題1で設定した自発的過換気と低酸素吸入が全力自転車運動時の呼吸代謝応答および運動パフォーマンスに及ぼす影響を検討するという計画に基づいて着実に研究を推し進めた。現在では、その研究成果を国際雑誌に投稿している段階であり (Under review)、国際学会への発表準備も行っている段階である。さらに、研究課題2について、予備実験を行っており、運動プロトコルの確認等を行っている段階である。 一方で、研究課題2の予備実験中に実験に用いている電磁ブレーキ式エルゴメーターの動作不良が生じ、新たにエルゴメーター購入する必要が生じた。現在では問題なく実験を行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、自発的過換気と低酸素吸入が高強度運動後の循環応答に及ぼす影響を検討するために予備実験の継続および本実験の遂行を継続していく。 現在では実験の遂行計画に支障はないが、新型コロナウイルスの感染状況次第では被験者数が当初の予定より確保できない場合がある。そのため、可能な限り実験の遂行を前倒しで行い、被験者数を確保できるよう努める。また、施設の入構制限などで実験の遂行に支障が出てしまう場合には、PCR検査等で陰性が確認できた者に対しては実験が行えるよう準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、予定していた学会発表がオンライン開催になったことで計上していた分の使用額が次年度に繰り越されることになった。繰り越された金額の使用計画に関しては、英文校正費や、学術雑誌の投稿料として使用する予定である。
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