研究課題
糖尿病病態では高グルカゴン血症が認められる。特に食後の高グルカゴン血症が顕著であることを糖尿病患者及び糖尿病モデルマウスで明らかとしてきた。その中でも、糖尿病病態では、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の摂取後にグルカゴンの分泌応答が亢進していることを見出している。BCAA応答性のグルカゴン分泌障害のメカニズムとして、膵α細胞のBCAA代謝異常が関与していることを考え、膵α細胞特異的BCAA代謝関連酵素欠損マウス(Glucagon Cre, BDK floxedマウスを交配:αBDK欠損マウス)を作製した。この遺伝子改変マウスでは、膵α細胞におけるBCAA代謝が亢進していることが想定でき、肥満・糖尿病病態でもBCAA応答性のグルカゴン過剰分泌が起こらないといった仮説を立てた。αBDK欠損マウスに60%高脂肪食負荷を行い、肥満・糖尿病の誘導を行った。αBDK欠損マウスでは、高脂肪食誘導による体重増加に変化は認められなかった。今後、糖尿病の病態の変化に加えて、BCAAの単回負荷試験を行い、グルカゴンの分泌に変化があるかを検証していく。またその詳細なメカニズムの検討のために、単離膵島および単離α細胞の条件検討を行っている。単離膵島の実験では、カルシウムイメージング法により、リアルタイムでのグルカゴン分泌を評価していく予定であり、実験系の条件は整えてある。また、単離α細胞の条件検討はフローサイトメーターを用いて膵α細胞単離の新たな手法の確立を試みているところである。様々な手法用いて、糖尿病病態における膵α細胞の代謝異常と分泌障害の関連を明らかにしていきたい。
3: やや遅れている
2021年度中の異動に伴い、遺伝子改変マウスの再樹立に時間がかかっている。
遺伝子改変マウスを作製し、講師防食負荷を行った際の耐糖能やグルカゴン分泌動態を調べていく。また、詳細なメカニズムの解析のために、膵α細胞のソーティングを試みている。これらの実験により、肥満・糖尿病病態における膵α細胞の分泌異常のメカニズムを明らかにしていく。
異動に伴い、計画した実験が十分にできなかったため。次年度はモデル動物が確立するため、in vivo, in vitroの実験共に、積極的に行う予定である。
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The Journal of Nutritional Biochemistry
巻: 97 ページ: 108811
10.1016/j.jnutbio.2021.108811