研究実績の概要 |
糖尿病病態では高グルカゴン血症が認められる。特に食後の高グルカゴン血症が顕著であることを糖尿病患者及び糖尿病モデルマウスで明らかとしてきた。その中でも、糖尿病病態では、分岐鎖アミノ酸(BCAA)の摂取後にグルカゴンの分泌応答が亢進していることを見出している。BCAA応答性のグルカゴン分泌障害のメカニズムとして、膵α細胞のBCAA代謝異常が関与していることを考え、膵α細胞特異的BCAA代謝関連酵素欠損マウス(Glucagon Cre, BDK floxedマウスを交配:αBDK欠損マウス)を作製した。この遺伝子改変マウスでは、膵α細胞におけるBCAA代謝が亢進していることが想定でき、肥満・糖尿病病態でもBCAA応答性のグルカゴン過剰分泌が起こらないといった仮説を立てた。前年度までに、αBDK欠損マウスに対し、60%高脂肪食負荷を行い、肥満・糖尿病の誘導を行った。本年度は、αBDK欠損マウスのグルカゴン分泌能を評価した。しかし、高脂肪食の負荷期間が短かったために、肥満・糖尿病による高グルカゴン血症が認められなかった。このため引き続き、高脂肪食負荷を行い、糖尿病・肥満病態が増悪した時期に評価を行う予定である。ストレプトゾトシン誘導性の糖尿病モデルマウスもBCAA応答性グルカゴン分泌能が亢進することを見出しているため、αBDK KOマウスに対し、ストレプトゾトシン投与を行い、評価を検討する。 また膵α細胞のグルカゴン分泌障害の詳細なメカニズムの検討のために、単離膵島および単離α細胞の条件検討を行った。特に今年度は、フローサイトメーターを用いて、膵島からα細胞を特異的に回収することに成功した。これより膵α細胞の評価が可能となり、糖尿病病態における膵α細胞の代謝異常と分泌障害の関連の検証が可能となった。
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