本研究は、変形性膝関節症患者において、歩行中に生じる半月板の逸脱動態ごとに運動力学因子との関係性を検討することで、半月板逸脱に関与する個別力学因子を抽出する。さらに、抽出した力学因子をウェアラブルセンサー情報に落とし込むことで、半月板ストレスの簡易可視化を目指している。 半月板逸脱動態と関連する力学的因子の抽出については、52名の膝OA患者と健常高齢者10名をリクルートし、逸脱動態を説明する半月板の挙動量と挙動時間を解析した。挙動時間に着目し、健常高齢者と類似した正常群、早期および遅延している前期群、後期群の3群に分類した。結果として、歩行中の挙動量は、前期群で1st膝関節内反モーメントおよびlateral thrust、正常群で2st膝関節内反モーメント、そして後期群で膝関節屈曲モーメントおよびその積分値とそれぞれ関連を示した。これらの力学因子は既に膝OAの進行に関与することが示されている。したがって、半月板逸脱の動態は、個別的な膝OAの力学病態を反映する信用に足る見解を得た。 さらに抽出されたそれぞれの力学因子に関して、ウェアラブルセンサーを用いた簡易可視化を検証した。23名の膝OA患者において、加速度・角速度データを用い、力学因子との関連を検証した。結果として、1st膝関節内反モーメントおよびlateral thrustは、大腿・下腿部の外側加速度、2st膝関節内反モーメントは大腿部の前方角速度、そして膝関節屈曲モーメントは下腿部の前方加速度と関連していた。つまり半月板逸脱を増悪させる力学因子は、ウェアラブルセンサーでの可視化が可能なことが示された。 これらの結果は、早期段階の変形性膝関節症患者に対する、異常な力学病態の検出や予防・治療戦略に貢献し、国内での研究発表および国際論文化にて知見を公表した。
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