研究課題/領域番号 |
21K21219
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
富永 直臣 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教(テニュアトラック) (90891507)
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研究期間 (年度) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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キーワード | エクソソーム / 細胞外小胞 / 老化 / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
エクソソームは100nm程度の小胞で、様々な細胞から分泌されることが分かっている。細胞内で作られたエクソソームには、タンパク質、RNA、DNAなど様々な分子が内包されている。エクソソームは細胞から分泌されると、近くの細胞や血流によって遠くの細胞に取込まれる。エクソソームが細胞に取込まれると、内包されていた分子が作用し、受容細胞の状態を変化させる。近年このようなエクソソームを中心とした細胞間コミュニケーションメカニズムによる生命現象が明らかになってきている。しかし、エクソソームを中心とした細胞間コミュニケーションメカニズムと老化との関連については不明な点が多い。超高齢社会を迎えた日本では、老化関連疾患のメカニズム解明と治療法の開発が求められている。本研究では、骨格筋由来エクソソームを介したフレイルによる認知症発症メカニズムの解明を目的としている。本研究では、若齢・老齢マウスから骨格筋幹細胞(筋芽細胞)を回収し、細胞株の樹立を行う。さらに、それら細胞株からエクソソームを回収し、マウス体内での動態、脳への影響を明らかにしていく。当該年度では、研究室立ち上げの準備を中心に周辺研究環境の準備を行った。例えば、動物実験倫理申請、DNA組換え実験申請などを含む。さらに、学内研究連携の樹立も行った。次に、マウスの骨格筋から筋芽細胞を回収し培養することに成功した。本研究継続により、臓器間コミュニケーションダイナミクスの理解と新規治療法開発に貢献することが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エクソソームは、様々な細胞から分泌される100nm程度の小胞で、細胞間コミュニケーションに重要なツールであることが、近年の研究で明らかとなってきた。今後さらにエクソソームを中心とした臓器間コミュニケーションメカニズムの解明が求められている。骨格筋は老化に伴って筋力が低下し続けると、フレイルと呼ばれる社会的活動に影響が出る状態に至る。これまで、フレイルになることによって認知症発症リスクがあることが示唆されているもののそのメカニズムは不明のままであり、その解明が求められている。本研究では、エクソソームを中心とした臓器間コミュニケーションに注目し、フレイルによる認知症発症メカニズムの解明を行う。研究スタート支援採択後、海外からの着任であったため、研究室の整備から始めた。基本的実験機器の購入、細胞培養、動物実験、DNA組換え実験等法令関係の倫理申請を済ませた。当初の予定より、倫理申請関係は時間がかかった。本学では、エクソソームを行う実験環境が整備されていないため、この環境整備も同時に行い、十分な研究環境整備を早期に行うことができた。さらに、本研究で重要な、筋芽細胞の初代培養も行った。マウスの足から骨格筋を回収し、ハサミを用いて細かく裁断した後、コラゲナーゼで処理し、遠心分離により細胞を回収し、マトリゲルコーティングしたプレートに播種し培養を行った。現行の問題点として、エクソソームの体内動態を観察する共通機器(IVIS)が故障してしまった。修理する目途が立たないため、新たな局在イメージング法の開発を進めている。さらに、マトリゲル、プレート、ピペットチップなど実験消耗品の円安価格上昇、入荷目途が立たない、また消費税による研究費の目減りなどの問題で今後の研究推進に影響することが懸念される。現状では、ある程度の分量を確保しているが、今後の世界情勢の影響を十分に考慮する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、骨格筋由来エクソソームに注目し認知症発症メカニズムの解明に取り組む。 骨格筋老化に伴い分泌されるエクソソームがBBBを破壊する結果、認知症発症に寄与している可能性がある。特に、研究活動スタート支援で、骨格筋由来エクソソームにBBB破壊作用があるかをin vitro及びin vivoモデルを用いて明らかにする。本研究で主に使用する、筋芽細胞の初代培養を行った。また筋芽細胞に対して、分化誘導、Myogenin発現の確認等の性質の確認を行っている。研究過程でIVISの故障と修理未定の状態によって、体内動態の観察が学内でできない状態であったが、新たなエクソソーム局在イメージング法の開発に取り組んでいる。手法として、組織透明化技術を用いて、組織を透明化し、エクソソーム特異的抗体で染色する。イメージングは、光シート蛍光顕微鏡であるUltraMicroscoeII(Miltenyi Biotec)を用いる。現在までに、脳・肺・肝臓の透明化を完了しており、UltraMicroscoeIIによる観察においてバックグラウンドが無く蛍光観察に耐えうる十分な組織透明化技術を習得した。さらに、透明化組織内エクソソーム染色によるイメージングを進めている。より柔軟なin vitro解析が可能になるようIn vitro BBBモデルは学内共同研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験手法変更による実験試薬等の購入が起こったため。次年度は、新たな手法開発に加え、研究計画上の使用計画を遂行する。
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