エクソソーム(細胞外小胞)は100nm程度の小胞で、様々な細胞から分泌されることが分かっている。細胞内で作られた細胞外小胞には、タンパク質、RNA、DNAなど様々な分子が内包されている。細胞外小胞は細胞から分泌されると、近くの細胞や血流によって遠くの細胞に取込まれる。細胞外小胞が細胞に取込まれると、内包されていた分子が作用し、受容細胞の状態を変化させる。近年このような細胞外小胞を中心とした細胞間コミュニケーションメカニズムによる生命現象が明らかになってきている。しかし、細胞外小胞を中心とした細胞間コミュニケーションメカニズムと老化との関連については不明な点が多い。超高齢社会を迎えた日本では、老化関連疾患のメカニズム解明と治療法の開発が求められている。本研究では、骨格筋由来細胞外小胞を介したフレイルによる認知症発症メカニズムの解明を目的としている。本研究では、若齢・老齢マウスから骨格筋幹細胞(筋芽細胞)を培養・分化させた後、細胞外小胞を回収した。回収した細胞外小胞は、粒子径、粒子数、タンパク質の発現について解析を行った。その結果、老化マウス骨格筋由来細胞外小胞では、粒子数が少なくタンパク質濃度が高いことが明らかとなった。さらに、一部のタンパク質発言に違いがあることを見出した。また、細胞外小胞の糖鎖修飾について8種類のレクチンを用いて、レクチンブロットを行ったところ、若齢・老齢骨格筋由来のエクソソームに発現パターンの違いがみられた。これらの結果は、老化により細胞外小胞が変質することを示している。本研究継続により、老化マーカーの発見、臓器間コミュニケーションダイナミクスの理解と新規治療法開発に貢献することが期待される。
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