昨年度,「低強度パルス超音波フォノフォレーシス療法の疼痛に対する効果検証」を目的に,①低強度パルス超音波(LIPUS)のみを照射するLIPUS群,②ジクロフェナクのみを患部に塗布するジクロフェナク群,③NSAIDsを塗布した上からLIPUSを照射する群 (フォノフォレーシス群),④関節炎群,⑤疑似処置の対照群を設定して7日間の介入を行った.その結果,Randall-Selitto法を用いた患部の圧痛閾値の経時的評価において,LIPUS群,ジクロフェナク群,フォノフォレーシス群のいずれも関節炎惹起後2日目より有意な改善を示し,特にフォノフォレーシス群での改善は著しく,起炎剤投与後7日目には対照群と同程度まで改善した.そこで本年度は「低強度パルス超音波フォノフォレーシス療法の疼痛に対する効果機序の検証」を目的にマクロファージの動態を検討した.検索試料は昨年度に採取した起炎剤投与後8日目の膝関節試料で,総マクロファージの指標であるCD68,M1マクロファージの指標であるCD11c,M2マクロファージの指標であるCD206に対する免疫組織化学染色に供した.結果,総マクロファージの指標であるCD68陽性細胞数ならびにM1マクロファージの指標であるCD11c陽性細胞数はいずれも関節炎群と比べてLIPUS群,ジクロフェナク群,フォノフォレーシス群の3群は有意な減少を示し,フォノフォレーシス群はこれら2群よりさらに有意な減少を示した.一方,M2マクロファージの指標であるCD206陽性細胞数はLIPUS群,ジクロフェナク群,フォノフォレーシス群の3群間に有意差を認めなかった. 以上のように,総マクロファージとM1マクロファージの結果は昨年度の圧痛閾値の結果と一致しており,フォノフォレーシスによる鎮痛効果はマクロファージ動態が影響していることが示唆された.
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