研究課題
肘内側障害は投球障害の中で最も発症率が高く、野球選手の全ての年代で問題となる障害の一つである。特に肘関節の不安定性が生じると、投球時の肘痛やパフォーマンスの低下が危惧される。この関節の不安定性を評価するツールの一つに超音波診断装置がある。非侵襲的かつ簡便に使用でき、関節の動態を可視化することに優れているが、実際に動いている関節を正確に定量化するにはさまざまな課題が残っている。本研究の目的は、関節の動態をリアルタイムに追跡して自動計測できるシステムを開発し、関節不安定性の定量評価を行うことである。2021年度から開発に取り組んだ自動追跡計測システムを用いて、2022年度はエコー動画の二点間距離を計測誤差0.4mm以下の精度で計測できること示し、これを英文誌に公表した(Kawabata et al. Sci Rep. 2023)。これによって、「関節の動き」をリアルタイムに自動認識して追跡し、関節間距離を定量化できるようになった。2022-2023年度は小学生・高校生・大学生の野球選手の肘関節外反ストレス時の肘内側裂隙エコー動画を収集し、関節間距離の計測とともに関節不安定性を示唆する線状高エコー像(Ring-down artifact: RDA)の陽性率を調査した。小学生と高校生の健常者におけるRDA陽性率は、先行研究の内側側副靭帯損傷者と同率であることが判明し、診断・評価の解釈に留意する必要があることを発表した(第34回日本整形外科超音波学会で口述、英文誌で査読中)。
3: やや遅れている
本研究のコアである自動追跡計測システム(足関節用)の成果を公表したが(Kawabata et al. Sci Rep. 2023)、肘関節に対する解析で使用するには再現性の課題を解決する必要があった。年代別の肘内側裂隙エコー動画を収集したが、それらの肘外反ストレス時の自動計測の精度を改善させる方法を模索して再検証を重ねている段階である。
現在取得したエコー動画の解析と精度の再検証を行い、その結果をまとめて超音波関連学会やスポーツ医学系学会の演題発表や英文誌への投稿に向けて準備を進めている。
2021-2023年度の予算のうち、国際学会への出張分と英文投稿料の分が未使用となった。次年度で全額を使用できることを見込んでいる。
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Orthop J Sports Med
巻: 12(1) ページ: -
10.1177/23259671241229079.