本研究は、足関節捻挫後に起こる姿勢制御不全機構の解明を目的とし、バイオメカニクス手法を用いて、健常者と足関節捻挫既往者の動作分析を実施した。 本研究の目標1には、「バイオメカニクス測定法の確立」を掲げ、臨床的バランステスト動作中の関節キネマティクス・身体重心・足圧中心・筋活動量などのバイオメカニクス変数を統合的に解析するためのプログラム作成、実験手順を構築した。目標2において、足関節捻挫既往者の身体重心制御の特徴を解明することを挙げ、その結果、足関節捻挫既往者は姿勢制御能力が健常者よりも劣るために、身体重心の移動が制限されていることが示唆された。さらに、目標3においては、他のバイオメカニクス変数を多角的かつ統合的に解釈するために、全てのバイオメカニクス変数を時系列的に同期することで、足関節捻挫既往者の姿勢制御の特徴を具体的に明らかにすることを試みた。その結果、足関節捻挫既往者は健常者に比して、臨床的バランステストの動作中における「前脛骨筋の筋活動量」・「内側広筋の筋活動量」が低く、「膝関節屈曲角度が小さい」ために、「身体重心の移動が制限されている」ことが示唆された。 上記成果については、3件の国際学会にて発表し、1件の査読付き国際雑誌に掲載された。さらに本報告作成時点で査読付き国際雑誌に投稿予定である。総じて、計画・目標通りに研究実施することができた。 本研究の成果は、足関節捻挫後の姿勢制御不全機序を量的および質的(動作特徴)に解釈できることを世界で初めて立証したことに意義がある。この成果は、足関節捻挫後の姿勢制御不全に対する根拠に基づいた臨床的介入法の立案に繋がり、足関節捻挫再発予防プログラム開発への発展が期待される。
|