研究課題
造血幹細胞移植は、重症血液疾患患者に対する数少ない有効な治療法であるが、移植後に顕著な骨格筋萎縮や身体機能低下が生じるというリスクもある。本研究の目的は、1.造血幹細胞移植が血中マイオカインレベルに与える影響と2.造血幹細胞移植患者の骨格筋量および身体機能と血中マイオカインレベルの関連を明らかにすることであった。最終年度である今年度は、昨年度に引き続きデータ収集を行いながら得られた一部のデータをまとめて学会にて報告した。1.造血幹細胞移植が血中マイオカインレベルに与える影響について、以下の知見が得られた。筋肥大を促すマイオカインであるInsulin like growth factor-1 (IGF-1)の血中レベルは、移植前と比較して移植後4週時点で統計学的に有意に低下した。一方で、筋萎縮を促すマイオカインであるMyostatinの血中レベルは、移植後4週時点では有意な変化を示さなかった。2.造血幹細胞移植患者の骨格筋量および身体機能と血中マイオカインレベルの関連について、以下の知見が得られた。日常生活動作に関わる代表的な下半身の筋肉である大腿直筋の横断面積は、移植前から移植後4週時点にかけてIGF-1濃度と同様に有意に低下した。また、移植後(退院時)の膝関節伸展筋力は、同時期の血清中IGF-1レベルと有意な正の相関を示した。一方で、握力、6分間歩行距離、および10m歩行時間はいずれもIGF-1と有意な相関を示さなかった。年度末までに最終的に、53例(当初の目標54例)の骨格筋量とマイオカインデータが得られた。現在、全例を対象にした解析結果を国際誌へ投稿する準備を進めている。
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